「私はここにいます。」

　お話としては、大学新卒だけど就職先の見付からない主人公が辛うじて就職できたのは、とあるシステム開発会社だった。
　システム開発の事など何もわからない主人公だが、ろくな研修もなくＳＥとして過酷な環境で働き始める、という感じ。
　作者の夏海公司先生自身が元ＳＥという事で、ＳＥの世界がリアルに、少なくとも素人目には見えるくらいには描かれています。
　電撃文庫から出ているラノベとは思えないような内容だけど、それでも謎の多いお姉さんキャラとか、ロリツンデレで凄腕の先輩ＳＥとか、ラノベらしい要素もきちんと押さえています。
　ＳＥという過酷な職場環境を舞台にしながら、必要以上に過酷に描かず、ラノベとして適度に楽しめるようにバランスよく描かれているのが好印象です。
　文章的にもストーリー構成的にもしっかりしているし、過不足ない説明と飾り気のない文体は、きっと理系的というべきなんでしょう。
　現にＳＥをやっている人、興味のある人のみならず、これから社会に出て行く若者、あるいはすでに社会で働いている人にも手にとってもらい、社会に出て働く意味や大変さの一端だけでも感じ取ってもらいたいところです。
　ただ、もったいないところは、カラーイラストはそれほど気にならないけど、作中の挿絵は線の弱さとか人体のバランスとかディティールなんかの面でとても気になります。
　あまりラノベらしくないラノベだけど、ラノベらしいラノベばかりでなく、ひと味違ったラノベを楽しんでもらいたいです。

　でわでわ。