「私はここにいます。」

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「トロッコ問題」が教えてくれる事。

 お待たせしました。
 予告通り、「たけしの日本教育白書」で紹介していた「トロッコ問題」についての私なりの考察をまとめてみようと思います。
「トロッコ問題」図解解説。

 気合い入れて解説画像など作ってしまいました。
 トロッコがそのまま走ってくると、線路上にいる5人の人間がひかれて命を落としてしまいます。
 でもたまたまポイントの近くにいるあなたがポイントを切り替えると、トロッコは分岐した線路に移るので、5人の人間は助かるけど、別の1人の人間がひかれて命を落としてしまう、という状況でで、あなたはどうしますか? という問題です。
 番組上でも紹介されていた回答として。
 1.ポイントを切り替えて5人の人間を助け、その代わり本来死ぬべきでなかった1人の人間を犠牲にする。
 犠牲になる人間が少ないので、最も現実的な回答かも知れません。
 でも自分が手を下して1人でも犠牲になる人が出るので、後味の良くない結末である事は確かです。
 2.自分で手を下して罪に問われるのは怖いので、ほっといて5人の人間が犠牲になるのを見過ごす。
 専門家じゃないから正確じゃないかも知れないけど、刑法では「未必の故意」というのがあって、5人の人間の命が助かる可能性があるのに、何もせずに黙って見過ごすのは、やはり罪に問われる可能性があります。
 とはいえ、分岐した先にも人がいる以上、無罪になる可能性が高いとは思います。
 どちらが正しいかどうかは別として、決断をためらったために、結果的にこうなる可能性が高いという意味では、現実的な回答なのかも知れません。
 3.ポイントを中途半端に切り替えてトロッコを脱線させて、全員を助ける。
 とりあえず反則的な回答の一例かと。
 しかしポイントが弾かれて、中途半端な状態で固定しているあなた自身が怪我をしたり命を落としたりする可能性もあるし、上手く脱線しないで5人か1人かどちらかがやっぱり犠牲になるかも知れないし、脱線した先にもっとたくさん人がいる可能性もあるし、壊れたトロッコの破片で5人と1人が犠牲になる可能性も否定できないし。
 不確定要素が多い、一か八かの回答なのであまり良い回答とは言えないかも知れませんが、自分では決断できないので「運を天に任せる」、「1人も犠牲にしない方法を最後まで考える」という点ではありの回答なのかも。
 一応、私なりの回答としては。
 4.大声で退避を呼びかける。
 そもそも線路上では、急に止まれないトロッコ優先が原則。
 人間が避けるべきであって、トロッコをどうこうして事態をどうにかしようという時点で、上の3つの回答は間違っています。
 これが最も現実的な回答だと思います。
 ……え? 動けないの?
 そりゃそうだ、あくまで思考実験だから、ポイントを切り替えるか切り替えないかを選ばないと。
 万が一、同じ状況に陥った場合は、この方法をお勧めしますが。

 ここからはあくまで切り替えるか切り替えないかで考えていくけど。
 そういえば、番組上では視聴者から意見を集めるだけ集めといて、パネラーの方々は自分の意見を出してなかったような。
 ちょっと聞いてみたかった気がします。
 「たけしの日本教育白書」という番組の主旨に添って、子供にどうするべきかと教える事を考えると。
 5人の人間が犠牲になるのを見過ごすか? 1人を犠牲にして5人を助けるべく、手を下すべきか?
 結論はシンプルにして簡単。
 どちらも正しいし、どちらも間違っていると思います。
 どちらを選ぶにしろ、選ばないにしろ、5人と1人の両方を助ける方法がなくて、目の前で5人ないし1人の人間が犠牲になる以上、きっと後々まで後悔する事になるし、その事で責められる事になるかも知れません。
 このトロッコ問題のような人命を左右する決断を迫られる可能性は、医者になるなりレスキュー隊に入隊するなりしない限り、まずないと思います。
 ですが我々人間は生きていれば、大小様々な、予想できるか予想できないに関わらず、意識しているかしていないかに関わらず、いずれかを選び取る決断を迫られています。
 何かを得るために、常に何かを失う決断をしているのです。
 身近な例で言えば、買い物をすれば、欲しい物を得る代わりにお金を失う事になります。
 お金を失えば、近い将来、もっと欲しい物が出てきた時にお金が足りなくなる可能性もあるし、急病などでまとまったお金が必要な時に困る事になるでしょう。
 しかしお金をケチっていれば、いつまで経ってもその欲しい物は手に入らないわけです。
 もうちょっと大きい話になれば、家の前の道路拡張工事のために立ち退きを迫られる事もあるかも知れません。
 みんなのために住み慣れた家を明け渡すか、それとも最後まで抵抗を続けるか?
 最近のニュースで言えば、財政難の大阪府での私学助成減額なども挙げられるでしょう。
 もし減額が行なわれれば、大阪府の財政破綻が避けられるか先延ばしになる代わりに、何人か何十人か何百人かの若者の最終学歴が高卒から中卒になってしまう事になります。
 極端に大きい例を挙げれば、原爆投下で広島と長崎で失われた数十万の命と、本土決戦が行なわれた場合に、それをはるかに上回る人命が失われた可能性があります(少なくともアメリカではそう主張しています)。
 身近な例に戻ってみれば、仕事帰りに1個32円のきなこもちチロルチョコを買ったら、帰りの電車代が足りなくなって歩いて帰る羽目になるかも知れません。
 1個32円のきなこもちチロルチョコのために歩いて帰るか? それとも電車に乗るためにきなこもちチロルチョコを諦めるか?
 さらに小さい小さい物になれば、歩き始める時に右足と左足どっちを先に選ぶかでさえ、それを意識するかどうかは別として、未来が変わるのです。
 決断するのはあなたなのです。
 どんなにしょうもない問題だったとしても、人命を左右するような重大な問題だったとしても、それを人に委ねるにしろ、真剣に悩むにしろ、何も考えないにしろ、あなたは決断しなくてはならないし、現にそうしているのです。
 我々人間が生きていくという事は、無限に続く可能性の連続の中で、ひとつの可能性を選んで現実にして、それ以外の無数可能性を切り捨てる、決断の繰り返しなのです。
 ここでトロッコ問題に戻ってみましょう。
 そもそもどうして私達は、5人を見殺しにするか、1人を犠牲にするか、という理不尽で不条理な選択を迫られているのか?
 全部、暴走して止める手立てのないトロッコのせいだし、問題文からはわからないが、壊れたブレーキを放置した人がいるのか、坂道できちんとブレーキをかけなかった人がいるのか、トロッコを暴走させた人のせいなのです。
 トロッコ問題で我々はポイントのそばで決断を迫られる役割だけど、トロッコを暴走させる人、5人と1人の決断の犠牲になる人、あるいはその家族や友人、どれもいつ自分の身に降りかかってきても不思議じゃない立場です。
 我々が考えなければならないのは、そもそもポイントを切り替えるか否かではない、トロッコを暴走させて、理不尽で不条理な選択を他人ないし自分に迫らないために、5人でも1人でも、他人に理不尽な犠牲を迫らないために、常によく考え、未来を予測し、注意を怠らない事なのです。
 そして自分や家族や友人を犠牲にした決断、あるいは自分や家族や友人の代わりに犠牲になった人達にどんな気持ちで向き合うのか?
 その中でポイントを切り替えるか否かというのは、山積みにされた無数の重大な問題と、繰り返される決断の中で、特に理不尽で不条理なひとつに過ぎないのです。
 楽しい事ばかりじゃない、時に現実は、我々に理不尽で不条理な問題を突きつけてきます。
 100%正しい、100%間違っている、なんて答えは滅多になくて、それでも我々はその中からひとつの答えを選ばなくちゃいけないし、それが「生きていく事」なんだと思います。
 だからせめて我々は犠牲を少しでも少なくするよう、日頃から努力と準備を怠ってはいけないのです。
 それが私なりの「答え」という事で。

 でわでわ。
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「「トロッコ問題」が教えてくれる事。」の評価です。

Comments

 mixiはやってないのでよく分からなかったり。
 無理なら無理で仕方ないですね。

 でわでわ。
wen-li | 2010/09/21 10:09 PM
ご返事ありがとうございます。
では、ありがたく転載させて頂こうと思います。

上記2点、承知いたしました。mixi内の日記なので、wsn-li様がご覧頂けないかもしれませんが・・・・。
しいたけ | 2010/09/20 11:42 PM
 どうぞお使い下さい。
 でも条件が二つだけあって、まずは図が転載である事を明記して、ここまでのリンクを張って欲しい事と、掲載したらURLを教えて欲しい事です。
 それだけよろしくお願いします。

 でわでわ。
wen-li | 2010/09/20 10:24 PM
はじめまして。古い記事を上げてしまって申し訳ありません。
図解が非常にわかりやすいですね!私もトロッコ問題を日記にて紹介しようと思っておりました。この図を転載させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?
しいたけ | 2010/09/20 08:54 AM

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