「私はここにいます。」

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「死想図書館のリヴル・ブランシェ」感想。


死想図書館のリヴル・ブランシェ (電撃文庫)

死想図書館のリヴル・ブランシェ (電撃文庫)

アスキーメディアワークス
とりあえずメイドさんとオカルトと、という一冊。



 たまたま本屋さんに行く機会があったので、せっかくだから何か一冊買っていこうかという事でチョイス。
 表紙のメイドさんが可愛かったからと、ネクロノミコンとかのオカルト異種格闘バトルだから、大外れはしないかなあと思ったんだけど。
 とりあえず文章を書いて神話の魔物や武器を呼び出して戦う設定がかっこよかったり、幼なじみがキャラ的に楽しかったりするのは良かったけど。
 全体的に盛り上がりに欠けるし、せっかくの魅力的な設定をストーリー上で生かし切れていないのがかなり残念。
 ただ魅力的な設定を思い付いたから、ただダラッと繋げただけ。
 あとがきには「自分の好きな要素を鍋のようにごった盛りにした作品」とあるけど、それをどう味付けして美味しい料理に仕上げるか、という点で何ひとつ考えがないように見受けられます。
 正直、がっかりでした。
 続きはネタばれ込みなので、できれば読後にどうぞ。
 せっかく幼なじみとメイドさんと妹がいるんだから、絡めて盛り上げればラブコメ要素的に楽しかったんじゃないかと。
 幼なじみとメイドさんが会う場面はあるけど、ストーリーの都合であるだけで盛り上がる事なく終わるのは残念。
 戦闘シーンでもったいなかったところは、せっかく文章で神話の魔物や武器を呼び出して戦う設定なんだから、あり得ない組み合わせを使ってみるとか、武器や魔物を高速筆記で次々と呼び出すとか、そういうひと工夫があっても良かったんじゃないかと。
 都合3回の戦闘シーン、最初と2回目は苦戦したり、助けが入ったりして何とかこなしているのに、最後のラスボスとの戦いが意外に余裕があるというのはいかがな物かと。
 最後に幼なじみを助けられないという展開になるなら、そこに至る主人公の失敗をもっと明確にしないといけないし、最後のラスボス戦での葛藤もきちんと描かないから、盛り上がりに欠けてしまいます。
 でも一番声を大にして文句を言いたいところは、助けられなかった幼なじみが神様のおかげで生き返る、という展開。
 登場人物が死ぬ、殺されるというのは、小説家にとって最大の武器のひとつと言えます。
 大切な人を守れなかった後悔、愛する人を失う悲しみ、命がけで戦う姿、身を挺して誰かを守る強さ……そういった物を担保するのは、死んだ人間が生き返る事はないという暗黙の了解があるからです。
 死んだ人間が生き返るという事は、それで感動した読者を騙す、裏切る事になるのではないでしょうか。
 本作では「今回だけ」とか「一回くらいの失敗は」とか言ってるけど、そういうのは作者の側の都合というか、言い訳ですよね?
 失敗をなかった事にするんじゃなくて、失敗は踏まえてその上で再び立ち上がる、という事でないといけないと思うのですが?

 でわでわ。
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