礎〜第2章 炎のさだめ〜(5)
〜 そして始まる 〜
校舎の脇の掲示板:
(BGM:日々のいとまに)
詩子 「うーん、あんたと茜は同じクラスでリムさんは別なのか」
私 「詩子・・・オマエも今日から新学年だろうが・・・自分の学校はどうした?」
詩子 「創立記念日よ」
私 「おいおい・・・・」
詩子 「なにか不思議?この日に学校が創立して運営されるのが?」
私 「ま、オマエが困らなきゃ・・・・・いいけど」
Lim「トライぃぃぃ・・・毎晩会いに来てくれないと恨むからねぇ」
私 「Lim また、人聞きの悪い事を」
Lim「里村さんにうつつぬかして、私の事忘れたら呪うからねぇ フフフフ」
詩子 「さっきから気になってるんだけど・・・アレは何?」
私 「あれは我が校の1年生と呼ばれる珍獣だ」
詩子 「入学式まだよねぇ・・・・」
私 「俗に言う留年組だな・・・・」
詩子 「あ、こっちに来るわよ」
私 「他人の振り、他人の振り」
アカネ「やっと復学出来る様になりました、よろしく」
茜 「アカネちゃんおはようこざいます」
アカネ「やっぱり、2年生は無理でした」
私 「見ろ詩子 一歩間違えたオマエの姿だ、出席日数が足りなくて留年・・・・」
詩子 「不吉な事を言わないで・・・」
アカネ「うぅぅ、大体私はこの学校に入学していたわけじゃないんですからね
2年生に編入出来なかっただけじゃない・・・・」
茜 「それで、登校は入学式からですか?」
アカネ「うん、入学式に出席する様に言われた、私としては入学式当日に
転校生として紹介してもらいたいんだけど・・・・」
私 「難儀な奴」
Lim「トライ、手続きとしてはそれが正解の筈だよ
アカネちゃん編入試験しか受けてないんでしょ?」
私 「そりゃそーだけど・・・ねぇ」
詩子 「アカネって学校に来て大丈夫なわけ?」
私 「ここ数ヶ月の特訓で約48時間の連続運用が可能になった」
詩子 「んー、修学旅行まで大丈夫って事ね」
私 「それまでには、更なる運用時間の増大が見こまれる」
詩子 「そう・・・よかったねアカネ」
茜 「そろそろ、時間です 自分のクラスに行かないと」
一同退場
校内を物色してるアカネ(BGM:虹をみた小径)
こうして自分で歩いてみるとなかなか新鮮ね
ついこの間までみんなの居た教室
でも・・・これからは新1年が使うんだ・・・
あ、なんかホントに留年した気分になってきたわ
でも・・・学校かぁ うふふふふふ
私は学校に通えるんだ・・・あはははは
えーっとこのあたりは2年の教室ね
あの人の教室ここ・・・だよね、
あ、いたいた ふーん自己紹介やってるんだ
・・・え、茜とキスしてた人? 折原・・浩平・・・
『そう茜、今君達がやってる事全部無駄なんだよ』
アカネ「最近 節操無く出てくるようになったわね? 何を焦っているの?」
『これは、これは、茜も言うようになりましたね
でも 今の君に”節操が無い”とは言われたくないですね』
アカネ「無節操に人間の振りなんかするなって?・・・
でもね私は人間の振りなんかしてないのよ
私は茜の振りをしているだけ、だって私は茜の偽者だもの・・・違う?」
『まいりましたね、誰ですか君にそんな知恵を付けたのは?』
アカネ「みんなね、今日を一生懸命に精一杯生きているみんなよ」
『もう一人のボクの名前をあげると思いましたが・・・』
アカネ「あの人は一番精一杯に生きているわね、残された時間は短いのに精一杯に」
『そうですか・・・それは困りましたね、もう一人のボクには早々に諦めて貰わないと』
アカネ「あの人はしぶといわよ」
『だから、茜には一働きして貰いますよ』
アカネ「残念ね、時間切れよ・・・教室に面した廊下で長話なんかしてるから ふふふ」
ヒゲ 「その生徒、何をしている? ちょっと来い」
『くっ』
アカネ「はい、先生様」
茜 「アカネちゃん?」
ヒゲ 「一年生か?」
アカネ「私の編入手続きは4月1日付けで成立しているはずですが
入学式に出るように指示は受けていますが、
入学式まで来るなとも言われませんでしたので校舎内を見学しています」
ヒゲ 「そ、そうか・・ぐれぐれも他の生徒の迷惑にならないように」
アカネ「それでは、先生様ごきげんよう」
茜 「今のアカネちゃんの応対、いったい誰に似たんでしょうか?」
私 「ううう・・・一緒に暮らしているからなぁ・・・うつるか?」
茜 「あんなに素直な子だったのに・・・・かわいそうに」
3年の教室ね・・・この階段を上りきると屋上に・・・
物騒な連中も動いてるようだし、屋上はパスね
Lim「アカネちゃんみっけ!」
Lim登場
アカネ「リムさん?・・・早いんですね・・・あれ?始業式は?」
Lim「当然パスよ」
アカネ「えっと・・・なんかリムさんのイメージが・・・・」
Lim「ん?私自身はともかく、Limのキャラクターとしてはあってるわよ
厄介な連中をみかけてね、目標がトライでないならアカネちゃんだろうと思って」
アカネ「リムさんには見えるんですか?」
Lim「一度経験してればね・・・私も一応は戦士だし」
アカネ「私が狙われてるってどうして判ったんですか?」
Lim「普通の生徒はHRの後、始業式・・・里村さんやトライが目標じゃない
単独行動をしているアカネちゃんだろうって・・・もしかして手遅れだった?」
アカネ「はい」
Lim「でも、その様子じゃ襲撃は失敗したみたいね、さすがはトライの愛娘」
アカネ「娘なんですか?私は????」
Lim「違うの?じゃ恋人?」
アカネ「あわわわわ、リムさんからかわないで下さい」
Lim「アカネちゃんの正体知ってるとね 扱いが難しいのよ」
アカネ「それで娘なんですか?」
Lim「そ、トライが大事に育ててるアカネちゃんだから」
アカネ「リムさん・・・」
Lim「私も詩子も知ってるわ、今トライが必死にここにアカネちゃんの
居場所を作ろうとしている事」
アカネ「その時私は・・・一緒に行くつもりですよ」
Lim「それでも可能性を広げようとするわ それがトライの闘い方だから」
アカネ「先輩の事よく知っているんですね」
Lim「ん? 先輩・・・あぁそう言うことね トライって慕われるの苦手だもんね」
アカネ「はい これで先輩はポックリです」
Lim「さてさて・・・これでもLimはトライの片腕だから トライが動けない時はサポートするのよ
ねぇ、そこに隠れてる皆さん」
(BGM:雨)
『お嬢さんには興味は無いのですが・・・茜を渡して頂けませんか?』
Lim「嫌よ この子は大切な子だもん」
『さてさて、人間ごときに何が出来ますか?』
Lim「私は弱いけど・・・Limは強いよ」
飛び掛るLimの爪が空を切る
『おやおや、何処を狙っているのでしょうか?』
アカネ「リムさんやめて、私があいつらの所に行けばいいだけなんだから」
Lim「アカネちゃんその言い方とっても哀しいよ」
Lim「ふふふ 私が何を狙ったかって? もちろん、君達がいた場所」
Limが切り裂いた空がどす黒く口を開いていた
Lim「お帰りはあちら」
『貴様』
Lim「私もね 一度は向こうの世界を望んだ人間なんだ
この世界に執着する事すら出来なかった君達に負ける気はしない」
アカネを襲った連中はLimが切り裂いた穴に飲み込まれていった
アカネ「・・・リムさんこめんなさい・・・・あの」
Lim「アカネちゃん・・・ちょっと昔の話なんだけど」
(BGM:潮騒)
現実の世界で起きた嫌な事をゲームの中でしか憂さ晴らし出来ない女の子がいたんだ
ゲームの中ですらそんな子と遊ぼうって人もだんだんいなくなってね
いつも独りでずっとロビーに座っていたんだよ
もうゲームの中にもその子の居場所はなくなってね
消えてしまいたいって思っていた頃だったんだ・・・
ううん、なんとかゲームの世界にだけには引っ掛かっていたそんな頃ね
トライに最初に逢ったのは・・・・ ほんとに失礼千万な奴でね・・・・
Limはトライの前で本気で怒っていた・・・・Limと同じ様に
その子もトライの事を怒っていた・・・・で、遊び終わって
もう一回トライに会いたいって・・・やっぱり変かな?
”怒る”って気持ちを久しぶりに思い出したような気がして
それからLimはトライの事だけをロビーで待っていた
トライってあんな性格でしょ、ほんと思い出したようにしか来なくて
でも、嬉しかったな、来た時はちゃんと遊んでくれたし
忘れてたものを1つづつ思い出させてくれた・・・哀しかったり、怖かったり
・・・・うっっ・・もしかしてトライに苛められてたの?
それを悦んでた?????・・・・・・なんか落ち込むなぁ
ある日 Limがトライに言ってたんだ「明日も遊ぼう」って
それからトライとLimはチームを組むようになって
その子はトライに現実の世界の嫌な事を相談するようになって
えっーと、嫌な事しか相談しなかったような気がする・・・
気が付いたら、その子は自分の居場所を取り戻していた
そして、里村さん苛めの一件があって、
バレンタインデーの一件があって、
トライは身近に居てくれる人でLimって呼んでくれる、みんなもそう呼んでくれる
Lim「Limは理想の私・・・・現実の私はやっぱり弱いままだけど」
アカネ「先輩は変わった人ですから・・・
でも、人に白い目で見られる事の痛みを知っている人です」
Lim「私がトライの様になれるまでにどのくらいかかるんだろう?」
アカネ「多分・・・無理です・・・先輩は変わった人ですから
だけど、リムさんは私を助けてくれました・・・先輩の様に」
Lim「ん? その辺が妥協点ってわけね」
アカネ「リムさんはリムさんらしければ それでいいんだと思います」
Lim「あははは、アカネちゃん それ ものすごく辛いよ・・・
だって、Limは理想の私だもん・・・私らしい私が理想の私
だけど・・・トライにも同じ事言われたよ」
アカネ「リムさんにも出来ますよ、だって先輩もそうですから」
Lim「人に触れられるのもダメな極度の人間嫌いね
だけどトライの周りには私達が居られるだけの場所はある」
Lim「リムさんは先輩とキスした」
アカネ「アカネちゃんだったら拒絶反応も無さそうだし やり放題じゃないの?
私なんか命がけよ あの時は屋上から突き落とされるかと思ったわ」
アカネ「拒絶反応は無いんですけど、それって人間扱いされてないって事なんですよね」
Lim「ねぇトライの理想って何だろう?」
アカネ「自分に関わった全ての人の幸せ・・・誰一人だって不幸にはしたくない」
Lim「あはははは、無茶な理想ね でもトライらしいや」
Lim「始業式が終わるまで屋上で待つ? それとも学食に行く?」
アカネ「いいんですか?学食なんて人目に付く所に行って、リムさん始業式サボり」
Lim「ま、そうだけど、人目に付く場所はとりあえず安心だから」
アカネ「あ・・・・」
Lim「単独行動はダメよ また襲われたら・・・・」
アカネ「その時はきっと またリムさんが助けてくれます」
Lim「アカネちゃん、その台詞は男の子に言うこと」
アカネ「あはは、そうですね、そうします」
〜 Limitter OFF 〜
学食の入り口にある自動販売機コーナー:アカネ
(BGM:日々のいとまに)
アカネ「アカネです、えっとリムさんは今隠れています
なんだかとっても楽しそうです・・・・・
それと、私の存在はかなり目立ってます
居るはずの無い1年生が学食で始業式をサボってます
ここで、姿を消したりすると・・・・真昼の幽霊として
学校の怪談になっちゃいそうです」
ふわふわと空中浮遊を始めるアカネ
アカネの事を見て見ぬ振りしていた学食のおばちゃん達の視線が集まる
Lim「なにやら、悲鳴のような声も混じってますね
アカネちゃんのセンスはトライより数段上ね」
そして・・・ふっとアカネは姿を消す・・・・そして隠れているLimの隣へ
一段と大きな悲鳴が上がる・・・・・
アカネ「えへへへへぇ」
Lim「この悪ガキ」
アカネ「だってリムさんばっかり楽しそうだったんだもん」
Lim「しかし、仕掛けるタイミングがいけない」
アカネ「どうして?・・・・」
Lim「おばちゃんの悲鳴を始業式帰りの生徒に聞かせてあげないと」
アカネ「あの・・・やっぱり リムさんのイメージがどんどん崩れるんですけど」
Lim「私のイメージって?」
アカネ「薄幸の美少女」
Lim「今は?」
アカネ「元気で明るいおねーさん」
Lim「なんだあんまり変わってないじゃない」
アカネ「え?」
Lim「じゃぁ トライのイメージは?」
アカネ「得体の知れない人」
Lim「うふふふ、そうそう で、Limはトライを継ぐ者だから
この世界に居てくれる間にトライの全部を受け継げたら
いいなって思ってるの」
アカネ「あ、やっぱり リムさんは薄幸の美少女だ」
Lim「どうして?」
アカネ「だって、きっと失敗するもの」
Lim「アカネちゃん酷いなぁ・・・それは、それでもいいの
私自身が、トライがこの世界に居た証
私がしぶとくこの世界にしがみついてる限り
トライがこの世界に居た事実も消えない
もしも、トライが居なかったら、
私はとっくにこの世界から消えてるもの」
がやがやと始業式帰りの生徒の喧騒が近づいてくる
Lim「さてと・・・私はクラスに戻るわね
学校の怪談ごっこは、ほどほどにするのよ」
アカネ「じゃ、リムさんまた後で」
Lim「OK」
暗転
商店街:詩子とLim アカネ(BGM:乙女希望)
詩子 「ねぇねぇ、ちょっと小耳にはさんだんだけど あんた達の学校って幽霊が出るんだって?
1年生の幽霊がふわふわって浮かびあがったらふっと消えたんだって きゃぁぁぁぁ!!」
Lim「目の前に居るじゃない」
詩子 「なにが?」
Lim「1年生の幽霊」
詩子 「えーー!・・・・つまり、アカネの悪戯?」
Lim「そう」
詩子 「アカネ最近明るくなったわね まぁ、確かにあの頃は
病弱な振りをしていただけ なんでしょうけど」
アカネ「だって私はアカネだもん」
詩子 「えっと、リムさんの真似? そういや、なんでLimなの?
ライムとかそれらしいのはありそうなのに」
Lim「中学3年の時にね、私をゲーセンでハメ殺した、陰険なTesse使いが居て
HP吸収→気絶→超電子イレーザーの極悪コンボしか使わないの
あの”リミッター解除します”の台詞が耳を離れなくて
いつか仕返ししてやろうと心に誓って・・・・
それから私のプレイキャラの名前は全部Limになったの
そうLimitter OFF の Lim」
詩子 「それで、仕返し出来たの?」
Lim「ううん、それ以来そいつゲーセンに来なくてそのままなの」
詩子 「せつない初恋ね」
Lim「初恋?・・・・あぁ・・そうだったのかも・・・・」
・・・・陰険ティセ使い????あれ?
私と茜登場
私 「なんか盛り上がってるね」
詩子 「無垢な少女を地獄に叩き落した極悪ゲーマーの話」
私 「盛り上がるにはなんか殺伐としてません?」
詩子 「心温まる初恋物語なのに なんでそんな酷い事を言うかな? こいつは」
私 「??? ?は? ??? ?」
アカネ「先輩!」
私 「先輩????アカネ? 悪いモノでも食べたか?」
アカネ「先輩はアカネの先輩だから先輩なんです」
Lim「トライ 春だからよ」
私 「食べ物じゃなくて 陽気のせいか」
茜 「いいじゃないですか あなたは本当にアカネちゃんの先輩なんですから」
私 「普段の生活でも、そう呼ばれかねない私の身になってみろ」
アカネ「先輩はアカネのこと嫌いなんですね・・・・ぐすっ」
Lim「可愛い後輩を泣かしましたね」
詩子 「まぁ、なんて酷い先輩なのかしら・・・・」
私 「わかった、わかった、じゃ好きにしろ」
アカネ「先輩!大好き!!」
私に抱きつくアカネ
私 「わ! アカネ止めろ!!」
Lim「ふーん、トライちゃんと反応してますね」
詩子 「ほんとだ、ピクピク痙攣してる・・・”先輩”攻撃の効果?」
Lim「トライ アカネちゃんはね、あなたに人間扱いして貰いたくて必死なの
その辺は判ってあげてね」
茜 「人間扱いって、あなたはアカネちゃんにも酷い事してるんですか?」
私 「茜! ”にも”ってなんだ?”にも”って?」
茜 「あなたは詩子にもリムさんにも酷い事したんですよね
今度はアカネちゃんにまで・・・・・」
詩子 「えっと、茜はアレの事言ってるんだよね?・・・物凄く誤解があるみたいだけど」
Lim「詩子 トライとやっちゃったってホント?」
詩子 「それは、リムさんだって同じでしょ」
Lim「Limはそこまで大胆じゃないわ」
詩子 「私って大胆? うふっ」
Lim「あはははははは」
茜 「詩子?リムさん?」
詩子 「茜、それ茜の誤解 あたしもリムさんも別にあいつに苛められた訳じゃないから
アカネの事を苛めてる訳でもないから安心して」
茜 「そう???なんですか????」
モノローグ:アカネ
みんなが居てくれる、この人だけじゃない、みんなが居てくれて
私をアカネと呼んでくれる、私は・・・もう少しここに居たい・・・・
ぎゅ! アカネの腕に力がこもる
私 「アカネさん、お願いだから、もう離して」
アカネ「嫌ですぅ!!」ぎゅ!ぎゅ!ぎゅ!
詩子 「あ・・・落ちた・・・・あたしの時はあんなに抵抗したくせに」
〜 明日見た夢 〜
(BGM:永遠)
モノローグ:私
うぅ・・・空が回る・・・えっと、どうしたんだっけ?
商店街でアカネに絞められて・・・
そのままノビちゃったのか・・・・情けない
えっと・・・ここは何処だ?
『ここは、折原浩平が茜と絆を結んだ場所』
『ボク達が茜の為に用意した場所』
『茜が君との思い出に別れを告げた場所』
『現実の中にある永遠、それを象徴する場所』
「何の用だ?」
『用? ボク達の用件は1つ君に消えて貰う事』
『違うよ 君に諦めて欲しいだけ』
「断ると言ったはずなんだがな」
『ふふふ、ふふふ、周りをよく見てから言って欲しいな』
ありふれた公園の風景、照明?スピーカー?土手の向こうは何かのグランドか?
子供の頃からこの街には住んでいるが・・・この公園には見覚えが無い
屋根の無いベンチに人影?
『そう、君の大切な人は今みんなここに居るんだよ』
茜、詩子、Lim Lim! Limの制服だけが乱れている
『すまない、あの子には、抵抗されたんで、少々手荒な真似をさせてもらった』
『大丈夫、怪我はさせてないから』
『それに、今はみんな楽しい夢を見ているだけだから・・・』
そして・・・光の失せた瞳で立ち尽くすアカネ
『そう茜が君の足止めをしてくれたから、全てが順調に運んだよ』
「それで、どうしろと?」
『君がボク達との約束を守ってくれるなら』
『君の大切な人達はこのまま帰してあげる』
「賢しいな、私には約束が守られたかどうかを確認する術は無いはずだが?」
『もっと自分を信じて欲しいな・・・・それに』
『君がこの世界から消える日は・・・・すべてが始まった日』
『ボク達の生まれた日』
『その日に君はこの世界から消える』
「焦って事を起こした割には、やけに猶予が長い なぜだ?」
『茜には幸せになって貰うよ』
『君がいけないんだよ、君が茜を幸せにしないから』
『折原浩平 折原浩平』
『クラスメートの折原浩平』
『茜が馴染むまで・・・茜を悲しませちゃいけない』
『クラスメートが慰める・・・自然な展開』
『ボク達が欲しいのは、最高の茜、幸せの絶頂に居る茜』
『君がいけないんだよ、浮気なんかするから』
「誕生日にこの世界から私が消えるなら、みんなには手を出さない
それが約束でいいのか?」
『そうだよ、それが約束、もしも君が少しでも変な真似をしたら』
『君の大切な人達 どうなっても知らないよ ふふふ ふふふ』
「その時は、オマエ達の目論見も水泡に帰す」
『意味の無い強がりは止めた方がいいよ』
『君の大切な人の誰かが不幸になるよ』
「最小の人的被害で最大の効果が出る そう一人を犠牲にするだけでいい」
『君は本気なのかい? あんなにみんなを大事にしているのに』
「"茜の血も肉も、未来永劫 俺一人のモノにする" こう言った方が理解が早いかな?」
『本気のようだね、でもなぜ君はそこまで強くなれる?』
「私には守るべきモノがある、でもそれ以上に守りたいモノがある それだけさ」
『そうか、やはり君は最後のボクなのかもしれない 他に何か望みは?』
「次に何かやる時は、せめてアカネを他のみんなと同じ様に扱ってくれ」
(BGM:A Tair )
私 「アカネ、アカネ・・・」
私の呼びかけで、アカネの瞳にかすかに光が灯る
アカネ「あ・・・・私のせいだ・・・・みんな私のせいだ
リムさん! リムさんは?」
私 「大丈夫Limは怪我はしてない、みんなも眠っているだけだから」
アカネ「よかった・・・
・
・
・
私を殺して・・・出来るでしょ?
もう・・・嫌 私はみんなを不幸にしてるだけだ・・・・」
私 「そうか・・・そんなにみんなが大事か?」
アカネ「あたりまえの事聞かないで!」
私 「みんなもアカネが大事だよ・・・・私が誰かを手に掛けるとしたら・・・茜
連中の最終目標が茜なら、茜の命は交渉材料になる・・・・・」
アカネ「言わないで!! それ以上言わないで 怖いんだよ 今みたいなあなたが」
私 「じゃぁ、私さえ居なければオマエだって不幸にならなかった」
アカネ「それも・・・嫌だ・・・・嫌だよ・・・・」
私 「どぉ 前言撤回する?」
アカネ「うぅぅぅ」
私 「これでも、有益な殺生は躊躇しないが
無益な殺生は好まないつもりなんだがな
大体おまえが死んで、何か1つでも解決するか?」
アカネ「・・・・・キス・・・して」
私 「???あ?」
アカネ「前言撤回するわ だから、私にキスして」
私 「情緒不安定気味だとは思っていたけど・・・ここまで悪化していたとは」
アカネ「ひどいぃぃ」
あ・・・”怒るって気持ちを久しぶりに思い出したような気がして”
あははは、怒ったら落ち込んでた気分どっか行っちゃった
死にたくなるほど落ち込んでる時よりは
怒ってる時の方がまだましなのね・・・・
アカネ「私・・・もうみんなと一緒に居られる自信が無い
死にたいと思った・・・
でも・・・だから・・・自信を・・・・下さい」
私 「しかし、アカネの自信って?」
アカネ「私は茜の偽者・・・・私の自信は茜に勝つ事・・・・
茜とはまだしてない・・・・
リムさんとはキスだけ・・・
詩子とは・・・・」
私 「こら!いちいち読み上げるな」
アカネを抱き寄せる
私 「覚悟はいいか」
アカネ「ふぇぇ・・・ムードも何も無いよぅ」
あ、でも・・・痙攣・・・してる 人間だと・・・私を人間の女の子だと・・・
唇と唇を重ねる軽いキス・・・・そして・・・
『アカネに楽しい夢を』
そして・・・腕の中のアカネの身体が消える
『約束は約束だ』
『君の大切な人達は丁重に送り届けるよ』
『もちろんアカネもね』
『君にも約束は守ってもらうよ』
「約束する必要も無かったんだがな、どの道この世界で
オマエ達と決着を付けるつもりは無かった」
『ふふふ ふふふ 強がりは止めなよ』
『例えば、詩子との幸せな未来』
『例えば、Limとの幸せな未来』
「見果てぬ夢さ、その未来はあかねの犠牲の上にしか成立しない」
『そう、君が茜を見捨ててもよかったんだ』
「ふう」
『どうした?』
「今日は長い一日だったよ・・・なぜ今日なんだ?」
『ボク達は君が茜を幸せにするのをずっと待っていた』
『君が茜を見捨てるをずっと待っていた』
『でも、君は抗い続けた』
『だから、ボク達は別の役者を用意した』
『茜に幸せを届ける主人公』
『主役交代、君は用無し』
『だから、君には消えてもらう』
「折原浩平・・・・そんなに特別な人物なのか?」
『君と・・・いや、ボク達と同じに向こうの世界を望んだ少年』
『君を失った茜を癒せる唯一の存在』
『そして、それは君の望み、君が望む茜の幸せ』
『君に抗う術は無い』
「私が茜を守る為に闘いを挑むと知ってもか?」
『もちろんその闘いは受けますよ、それが君の』
『最後のボクの力』
『君が勝って、ボク達はより高みを目指すのもいい』
『ボク達が勝って、至上の幸せを覚えた茜と向こうの世界で永遠に暮らすのもいい』
『あるいは次のボクに希望を託して、最初からやり直すのもいい』
「ホントに・・・今日は・・・長い一日・・・だった・・・・」
茜の物語「昨日見る夢」に続く
詩子の物語「蒼月」に続く
アカネの物語「時の輪」に続く
刹那と永遠の物語「ナイト○ア」に続く