礎〜第2章 炎のさだめ〜(4)

 〜 傀儡(くぐつ) 〜

朝 私の家 玄関前
ストーカー状態の詩子(BGM:見た目はお嬢様)

玄関より私登場

 私  「あ、詩子さんおはようございます」

 ぞわっ!! あとずさる詩子

 詩子 「事情は解っていても 寒いモノが走るわ
     アカネちゃんよね? えっとあいつは?」
 私  「昨日詩子さんが帰ってから、何も話してくれなくて・・・」
 詩子 「えーっと・・・回線落ち?」
 私  『どうやらそうらしい、こっちもブラックアウトして困ってたんだ』
 詩子 「また、いきなり・・・今度はあんたが幽霊の番ね」
 私  『いきなりと言われても・・・回復したらここに居たんだし』
 詩子 「状況はどぉ?」
 私  『どぉ? って・・・ブラックアウトしてる最中はなんにも出来ないんですけど』  
 詩子 「ほんとに、役立たずね・・・いつまでアカネちゃんに迷惑かけるつもり?」
 私  『そうだな、まずは遅刻しないで学校に行く・・・かな?』
 詩子 「えっ? もうそんな時間、で? あたしにかける迷惑は気にしないわけね」
 私  『当然だ』
 詩子 「はいはい、じゃアカネちゃん行くわよ」
 私  「はい」

登校中の私(アカネ)と詩子   

 詩子 「それで、事の原因は何なの?」
 私  『んーと・・・昨夜 アカネとアカネの実家に里帰りしたんだけど・・・・』
 詩子 「ちょっとまって、幽霊の実家って事?」
 私  『そうそう、その実家に行って・・・・私は帰ってこれないはずだった
     でも向こうになんかの手違いがあって、中途半端に生還ってところだな』
 私  「昨日は強制送還させるって言ってたのに」
 私  『連中は、あそこから私を追い出しはするが、むざむざ帰したりはしない』
 詩子 「じゃ、アカネちゃんはどうなの?一緒に里帰りしたんでしょ」
 私  『アカネにはまだまだ、こっちの世界に未練があるからね
     正確には昨夜の段階ではまだあった』
 私  「私が・・・帰れた理由・・・この世界に残した未練?・・・何?」
 私  『私がこの世界に帰るのなら・・・・・』
 詩子 「アカネちゃんだって帰りたい・・・相変わらず、嫌な計算をする人」
 私  「あ・・・私は・・・・」
 詩子 「で、あんたには、帰ってくるだけの未練は無かった訳だ」
 私  『覚悟は決めていたからね』

教室:私(アカネ)と茜と詩子(BGM:虹を見た小径)

 詩子 「茜、おっはよ〜」
 茜  「おはようございます 詩子またですか? 出席日数足りなくなっても知りませんよ」
 私  「茜さん おはようございます」
 茜  「・・・・え?」
 詩子 「実は、昨日茜に内緒でこいつとデートしたら・・・・
     よせばいいのにこいつったら”うまからエビチリもちそばもんじゃ”なんて食べるもんだから
     それから・・・ずっとこのちょーしなんだ・・・困ったねぇ」
 茜  「詩子が無理やり薦めたんじゃないんですか?」
 詩子 「茜、どーしてそれを いや、もんじゃに付け合せたあそこの自販機の
     缶ジュースのせいかも  そんなこんなで、責任とってこいつの保護観察をやってます」

 私  『私は食中毒なんですか?』
 詩子 「ばか! 茜に気づかれたらどうすんのよ あんたは黙ってて」
 茜  「詩子どうしたんですか・・・詩子もそのもんじゃを食べたんですか?」
 詩子 「あれ? 茜にはあんたの声聞こえてないの?」
 茜  『そう・・・みたいだね』

 茜は私(アカネ)の方を向いて一言
 茜  「あなたも馬鹿げた遊びはほどほどにして下さいね」
 私  「諌言耳が痛い」

 私  『ぷっ・・あれが私らしい応対? ま、どうやら茜は別の形で納得したみたいだね』
 詩子 「私があんたとグルになって茜をからかってるとでも思ったのかしら?
     ん???? ”あんたとグル”??? あれぇ?」

 私  『詩子どうした?』
 詩子 「今、思い出したんだけどアカネちゃんって、あんたと茜がデートした時
     あんたとグルになって私を無理やり二人のデートに引き込んだ時の
     高台の公園に居た妖精さん?」
 私  『当たり、しかしよく覚えてたね』
 詩子 「そりゃ、いつか仕返ししてやろうと・・・・
     あ・・・? 茜もいつか仕返しされると思ってたんだ」

授業中の教室:授業を受けている詩子と私(音声のみ)

 詩子 「で、これからどうするの?」
 私  『とりあえず、早々に事態を収拾しないとまずいかな』
 詩子 「どうして?」
 私  『時間割見て、次の体育の授業まで3日』
 詩子 「体育がなんか問題があるの?」
 私  『授業自身には問題無いと思う 問題はその直前のイベント
     オマエのサポート無しで、アカネが着替えを乗り越えられるとは思えない』

 詩子 「3日で収拾つかなかったら?」
 私  『その時は病欠するさ』
 詩子 「仮病欠ね、だったら問題ないじゃない」
 私  『詩子・・・・オマエ本当にそれでいいのか?』
 詩子 「よくは無いけど・・・しょうがないじゃない
     それで、事態収拾の見通しは?」
 私  『現時点での情報は・・・
     1.私がブラックアウトにならない為には、私の身体と詩子が十分接近している事
     2.私の声は詩子とアカネには聞こえるが、茜には聞こえない』
 詩子 「そうだけど・・・それだと何にも判ってないって事じゃないの?」
 私  『じゃ2番が、もし、詩子とアカネ以外の人間には私の声が聞こえないっ事を
     意味してるんだとしたらどぉ?』

 詩子 「私とアカネちゃんには特別な何かがある・・・あんたの事を・・・・だから?」
 私  『いや、それだと茜にも私の声は聞こえるはずだよ、もっと物理的な理由だなきっと』
 詩子 「ふーん、そーゆー言い方をするって事は、あんたにはもう判っている訳ね
     しかも、あたしには言いたくない理由って事なのね」
 私  『帰ってこれない筈の私が帰ってきた理由と今起きている事の根は同じモノだよ』

放課後の教室(BGM:雪のように白く)

 詩子に話し掛ける女子生徒3

 女子生徒3「どなた? よく見かけるけど里村さんのお友達?」
 詩子   「ん? 茜とこいつの幼馴染 詩子って呼んでね
       それで、あなたは?」
 女子生徒3「不信人物に名乗る名前は無いわ」
 詩子   「ふーん、誰かさんみたいな言い方するのね、ねぇコレとなんか関わりがあるの?」

詩子は私(アカネ)に視線を送る

 女子生徒3「こいつには、ちょっと因縁があって いつか仕返ししてやろうって思ってるけど」
       (トライ 現実のあなたも変わりませんね)

 詩子   「あなたもそうなのね、こいつは人の恨みを買うからねぇ」
 私    『うううう、詩子ひどぃ・・・恨みを買う程の付き合いはしてないよぉ』
 詩子   『あんたの関わりになった数少ない人からは、必ず恨まれてるじゃない
       いったいあの子に何したの?』
 私    『茜に手を出したらただじゃ済ませないって脅しただけ』
 詩子   『あんたはそうやって小さな恨みを買うんだよ』

 詩子   「で お名前は?」
 女子生徒3「言わなかった?不信人物に名乗る名前は無いって じゃぁね」

女子生徒3退場

 詩子 『ねぇあんたほんとにあの子に何したの?すごく根に持ってるわよ』
 私  『心当たりどころか・・・まともに会話した事だって無いのに』
 茜  「詩子、あの人は私の友達です」
 詩子 「ん? 茜?もう帰るの?」
     (あなたはあの子に何かしてる筈だよ、あの子が忘れられない何かを)

 席を立つ茜
 茜  「時期が時期ですから」

茜はカレンダーに視線を向ける

 詩子 「さて・・・期末テストの準備にはまだ早いと思うけど」
 茜  「詩子には送る人 居ないんですか?」
 詩子 「さてさて? 卒業式にも早い気もするけど」

 詩子がボケてみせる

 私  「私が居ないほうがよさそう話題ですね」
 茜  「気にしないで下さい、きっと詩子もわかってくれてますから
     では、お先に失礼します」
 私  「茜さんさようなら」
 詩子 「茜、また明日ね」
 茜  「詩子明日も来るつもりですか? ほんとに出席日数足りなくなりますよ」

茜退場

 詩子 「帰ってこれないはずのあんたが帰ってきた理由・・・ひとつ心当たりがあるけど」
 私  『たぶん、それが正解』
 私  「詩子さん?私には見当つきませんが」
 詩子 「そうね・・・じゃ、今回の件で出席日数が足りなくて留年したら
     あんた、あたしの人生がめちゃくちゃにならない様にちゃんと責任取ってくれるんでしょうね」
 私  『あははは、ホントに根の深い絆だね』 
 私  「詩子さんが呼び戻したの?」
 詩子 「この事と今起きてる事の根が同じって言うのがよく解らないんだけど
     私のせいって事なの?」
 
 私  『私の身体をアンテナに見立てて、通信機とアンテナが十分近い距離にあれば
     通信機とアンテナが直接繋がって無くてもなんとか通信は出来る
     通信機かアンテナに直接繋がっている第3者が居ればそいつは通信を傍受出来る』

 詩子 「アンテナに繋がっているのがアカネちゃん、通信機側は・・・あたし???」
 私  『オマエに呼び戻された私は、今何処に居るんだろう?』
 詩子 「ちょっと待って、あんたの居る場所って あたしって事?」
 私  『詩子が私を手放そうとしないから、私は自分の身体に戻れない
     いや、自分の身体とよりも詩子との絆の方が強いと言うべきかな』
 詩子 「もしそうだとしたら あたしはどうすればいい?」
 私  『わからんよ 私が詩子に嫌われればここから追い出されるのだろうけど
     それで自分の身体に戻れる保証は無いし、そうまでして戻りたいとも思ってない』
 詩子 「じゃ、今夜儀式をやるからよろしくね」
 私  『ちょっと待て、詩子どういう意味だ?』

 詩子 「あんたが私から追い出される条件は2つ、あんたの身体に戻る条件が1つ
     あたしがあんたを嫌うか、あんたの身体との絆が強まるか
     どっちにしろ今のバランスを崩せばあんたは追い出される
     追い出される時に、あたしとあんたの身体が直接繋がってれば
     あんたは自分の身体に戻れる・・・・違う?」
 私  『可能性は高いと思うが・・・・詩子、自分の言ってる事の意味解ってるか?』
 詩子 「あたしはね、あんたの事が大好きだよ・・・だから、責任は取ってよね」
 私  『やっぱり判ってないな・・・・答えを先に言っておく
     責任は取れない・・・・私には先約がある』

 詩子 「茜ね・・・なら、あんたは あたしを騙してでも自分の身体に戻るべきじゃないの?」
 私  『詩子・・・なぜそんなに無茶をする?』
 詩子 「そうね、あんたが戻ってきた所が、茜じゃなくて あたしだったからかな?
     茜よりはあんたとの絆が強い・・・・ならここで賭けに出たい
     それに・・・いつまでもあの頃のあんたじゃないでしょ?」

(BGM:遠いまなざし)

 私  『詩子・・・私の先約の相手は、もう生きてはいない』
 詩子 「そう、じゃその死人はあんたの為になにかしてくれるの?
     あたしならなんとか出来るんだよ」

 私  「詩子さん酷い・・・私にだって・・・・」
 詩子 「アカネちゃんなの? 約束の人って・・・・」
 私  『直接アカネじゃ無いけど関わりの深い人物
     その人の遺言で茜とアカネの事を託された・・・3年前の話だ
     もしも、その人が今、私の為に何かをしたと言うのなら
     今私の身に起きている事がそうじゃないのかな・・・・・』
 詩子 「あんた・・・」
 私  『こっちに帰るつもりは無かった、向こうに留まって・・・
     破壊の限りを尽くしてでも その人との約束を守るつもりだった
     ”おまえのやり方は間違っている”そう言われた気がするよ』
 詩子 「その約束って?」
 私  『あかねを守る事 それがその人の遺言』

 詩子 「・・・・今夜、行くからね・・・・逃げないでよ」
 私  『詩子・・・』
 詩子 「その人は あたしも知ってる筈の人なんでしょ・・・・
     なら・・・”あんたを守れ”それが・・・きっと あたしとその人との約束だよ」

暗転
  
   
 〜 蜜月 〜

深遠の闇:私(BGM:A Tair)
 詩子の中か・・・確かに居心地はいいな
 しかしだなぁ「逃げるな」とは言われたが
 すでに囚われの身なんだけどぉ・・・・
 「優しさは闇 すべてを飲込む底無しの檻」
 ふ・・・カオスワードそのまんまだ

私の家 居間:私(アカネ)
 私・・・何を待っているんだろう? 誰を待っているんだろう?
 このまま逃げてしまえば・・・・でも、あの人が救われない
 また独りぼっち・・・・はやく帰ってきて・・・でも、詩子が・・・
 あー・・・・イライラする・・・・・

茜の家 キッチン:大鍋をかき回す茜
 えっと・・・ここでイモリの生き血を1滴・・・・
 イモリ????えっとブラッドベリーじゃだめかしら?
 コウモリの羽????おいしくなさそう パス
 弱火で3昼夜煮込む・・・圧力鍋使えないかしら?

受け付けロビー:Lim
 トライ・・・今日も来てくれない・・・
 里村さんと詩子さん・・・幼馴染か
 楽しそうだったわ 私もあなたの友達なんですから
 少しはかまって下さいね
 それと・・・私はいつもここで待ってますから
 遊びに来て下さい

詩子の家 自室:詩子
 あーーー・・・あたしったらなんてこと言っちゃたんだろう
 「今夜行くから、逃げないで」って・・・・うみぃ
 でも・・・他に方法なさそうだし・・・・
 茜に取られたくは・・・・あ、最低だ・・・
 あいつと茜の仲 とりもつつもりだったのに・・・・
 今ごろ茜 チョコつくってるんでしょうね・・・
 あぁ時間・・・・もう出かけないと・・・・・

私の家 居間:私(アカネ)と詩子(BGM:追想)

 私  「詩子さん酷いよ、私を独りにしないで」
 詩子 「アカネちゃん!? あいつは?」
 私  『いちおーここに居るけどな 私が囚われの身だと言う事を
     忘れて貰いたくは無いな、詩子が不用意な行動に出れば
     アカネが独り取り残される』
 私  「ふみぃ・・・淋しかったよぉ」
 詩子 「アカネちゃんゴメン・・・・・ん、じゃない!
     私はここにほのぼのしに来たんじゃない!!」

私(アカネ)の表情が険しいものに変わる
 私  「じゃ、用意してくるわ なにか言っておく事ある?」
 詩子 「アカネちゃん?」
 私  『アカネ迷惑かけたな』
 私  「本当いい迷惑だわ、この次は自分一人犠牲になればいいなんて考えない事ね」

私(アカネ)退場 

 詩子 「ねぇ、アカネちゃんって何者?」
 私  『・・・・・・・・・・・・・』
 詩子 「ねぇ、聞いてる?・・・・・そっか身体と離れちゃうとだめだったね
     アカネちゃん・・・あなたの従妹じゃないわよね
     でも、私には子供の頃にアカネちゃんと一緒に遊んだ思い出もあるのに・・・」
     じゃぁ誰なのかなぁ?茜をいつも庇っていたあの人は?
     あの人があなたの約束の人? 私が覚えて居る筈の人?
     ・・・・忘れなくちゃいけない人?
     その人のことを忘れられないからあなたに災難が起きるの?」

アカネ登場

 アカネ「用意出来たわ、後は煮るなと焼くなと好きにして・・・・
     詩子もっと誇らしげな顔をしたら? あなたは勝ったのよ」
 詩子 「アカネちゃん・・・その前に聞いておきたい事があるの
     あなた・・・・何者?」

 アカネ「・・・私・・・私は茜の半身・・・・茜が忘れてしまった姉さんの記憶
     あの人が姉さんの事を覚えていてくれるから 私はここに居られる」
 詩子 「アカネちゃんの実家って・・・・・」
 アカネ「簡単に言うと茜を狙ってる奴が居るの
     そいつに捕まってた私をあの人は助け出してくれた・・・・
     ちょうど詩子が向こうの世界からあの人を呼び戻したみたいに」
 詩子 「なら、私も負け組みね・・・勝ったのはあなたのお姉さん
     茜を守る・・・・それがどんなに些細な存在でも
     最後の一人になっても・・・・茜を守る・・・
     大切な人と交わした約束なら・・・それがあいつの一番怖いところ」
 アカネ「私は・・・姉さんの替りにはなれない 茜の替りにもなれない
     あの人をどんどん追い詰めてるだけじゃない!! 私は・・・」

 詩子 「アカネちゃんそれは・・・」
 アカネ「詩子! あんたはやる事 さっさとやって来たら!!」
 詩子 「そうね、私は私の敗北を噛み締めてくるわ・・・・」
 アカネ「ぁ・・・・ごめん」

詩子退場(BGM:雨)
 アカネ「詩子に当たったってどうしようも無いのに・・・・
     茜を嫉んでいた頃の私の方がまだましだ・・・・・」   
 
  私は・・・・不幸を撒き散らしてるだけじゃない

暗転
 

 〜 三下半 〜

私の家 居間 夜半
ソファーで頭を抱え込んでいるアカネ(BGM:雨)
詩子登場 アカネ顔を上げる

 アカネ「詩子・・さん・・・あの人は?」
 詩子 「呑気に寝てるわ」
 アカネ「そう・・・」
 詩子 「それから、あたしの事は詩子でいいわ」
 アカネ「あ・・・シャワーの・・・用意・・出来て・・ます・・・」
 詩子 「ありがとう、使わせてもらうわ アカネあんたがしっかりしなくちゃ
     人間嫌いのあいつの傍に居られるのはアカネだけなんだから」

詩子風呂場へ
 アカネ「詩子・・・・」
 詩子 「あいつは人間を寄せ付けない・・・こんな状況でも・・・あいつは」

 詩子の二の腕に引っかき傷が浮かぶ・・・そして全身に無数の擦り傷
 しみる傷に詩子がうめく
 「くっ!・・・」

 シャワーの音の中に詩子の声が漏れる
 「うっ・・・・う・・・・ぅ・・・」

 アカネ「詩子あなたはこうなる事を知ってたんですか?」
 詩子 「そう、いつもの・・・あいつなら・・飄々と逃げるから・・・
     でも、逃げない約束だったから・・・・生傷ぐらいは覚悟していたよ」

シャワーの音が止む 髪を拭きながら詩子登場

 詩子 「アカネ あたしは当分あいつには会わないから 後はよろしく」
 アカネ「詩子が居たからあの人は助かったのに」
 詩子 「違う・・・ この後あいつが何をするか判る?
     二戦目の準備 あたしはあいつを地獄に突き落としただけ」
 アカネ「詩子・・・これ」

 アカネは塗り薬を差し出す

 詩子 「大丈夫、あいつは手加減してくれたから・・・・
     手加減してくれない方がよかったな
     あいつの痛み・・・結局自分の中に溜め込んだままだ
     両親を殺されて、世間から白い目で見られて
     あいつはずっと戦ってきた・・・・勝てるはずも無いのに
     ずっと人間と戦ってきた・・・たぶんこれからもずっと・・・」
 アカネ「だったら、詩子じゃなきゃ駄目じゃない
     茜にあの人を支えられて? 私に支えられて?」

 詩子 「アカネ あいつの事 お願いね」
 アカネ「詩子!」
 詩子 「あいつの傍に居られる・・・それが出来る人
     あたしだとこうなるのよ・・・・・・」

 詩子は腕の傷に指を這わす

 詩子 「ここまで追い詰められても誰も頼ろうとしない・・・
     私も人間だから・・・あいつの嫌ってる・・・人間・・だから・・・うぅ」

 私の枕元に・・・・泪に濡れた大吉のおみくじ

 〜 触発 〜

教室 1週間後:私と茜 アカネ(音声のみ)
(BGM:無邪気に笑顔) 
 
 茜  「詩子どうしたんでしょう?今まで”来る”と言って
     来なかった事は無かったのですが・・・もう、一週間になります」

 ・・・詩子・・・礼も謝罪もさせてくれないのか・・・・

 茜  「あの聞いていますか?」
 私  「おおかた、出席日数の計算でも間違えたんだろ?」
 茜  「そうですね・・・・でも今日は来ると思っていたのですが・・・・あ、それ?」
 私  「こないだ詩子に貰った・・・・他人の引いた大吉貰ってもなぁ・・・・」 
 茜  「でも、大事に持っているんですね」
 私  「なんとなく・・・だけど」
 アカネ『詩子泣いてたよ・・・・何にも出来ないって』
 私  『自分したことぐらい・・・判ってるさ』

女子生徒3登場

 女子生徒3「里村さんおはよう」
 茜    「おはようございます」
 女子生徒3「あんた、後でちょっと付き合って」
 私    「おぅ! 茜もしもの時は代返を頼む」
 女子生徒3「こらぁ!」
 私    「いや、”ツラかして”なんて言うから・・・・」
 女子生徒3「そんな事言ってない!!」

 アカネ  『なんのつもり? 詩子がいったいどんな気持ちで居ると思ってるの!』
 私    『詩子の気持ちが落ち着くまではいつも通りに振舞うしかないよ
       詩子は”責任を取れ”と言ったはずだが・・・・
       私はその機会すら与えられていない』
 アカネ  『責任取るつもり?』
 私    『詩子がそれを望むなら最大限の努力はする』
 アカネ  『だから・・・・詩子はあんたに会わないのよ』
 私    『そうだろうな・・・でも、他の方法を私は知らない』

 女子生徒3「これでも私はあんたの友達のつもりなんだけどな」
 私    「だから、茶化してる」
 女子生徒3「HRには時間はあるわね、さっさと決着つけてあげるわ ちょっと来て」
 私    「茜、短い付き合いだったな・・・・達者で暮らせよ」
 女子生徒3「まだ言うか!!」
 茜    「ふふふ、がんばってくださいね」
 女子生徒3「里村さん?」

私と女子生徒3退場
 
屋上:私と女子生徒3
 女子生徒3「あんたに渡しておく物があるの」
 私    「引導か?」
 女子生徒3「そうね引導になればいいわね」

(BGM:海鳴り)
空気に緊張が走る・・・周囲が凍る
 私    「日中のしかも学校で仕掛けてくるか」

 「ようこそ、ボクの世界へ」

屋上の扉の前にもう一人私

 「おや? お嬢さんは茜じゃないね・・・この日にもう一人のボクに想いを寄せるのは
  茜だけだと思っていたのに 君は意外ともてるんだね」

 私    「なんのつもりだ?」

 「なに、君に自分の非力さを思い知らさせて茜を諦めてもらうつもりで
  この日を選んだのだけれど・・・・ヒロイン交代とは・・・・
  ふふふ、君も知っている様に屋上の出口はこの扉
  お嬢さんを置いて行くのなら、ここから出してあげよう」

 私    「笑止!」

 「ならば、そのお嬢さん共々この時間の止まった世界で朽ち果てるがいい」

(BGM:ゆらめくひかり)

 私    「やれやれ・・・長期戦になりそうだ」

 「貴様」

 私    「ほらほら、ちゃんと出口のドア守ってないと勝手に出て行っちゃうよ」

 女子生徒3を連れて物置の脇にある蛇口を確認する
 私    「給水タンクの直下だもんな・・・水の心配は無し」

 物置から体操用のマットを出して広げる
 女子生徒3「なんでこんなものがあるの?」
 私    「なんでって・・・昼休みに生徒が屋上で遊ぶボールなんかを入れておく物置だもん」
 女子生徒3「屋上で床体操する人いるの?」
 私    「あとは・・・屋内用の鉄棒と跳び箱とボールが各種・・なわとびなんかあるけど
       必要なものある?」
 女子生徒3「とりあえずマットの上でのんびりしてればいいのね」

マットに足を投げ出して座る女子生徒3
 私    「なかなか度胸があるね」

トライあなたが一緒ですから
 女子生徒3「ところでアレって何者?」
 私    「当人は自己紹介はすましたつもりでいるようですが」
 女子生徒3「じゃ、あんたって何者?」
 私    「んーーー君のクラスメイトで茜の幼馴染で、成績は大していいわけでも無く・・・」
 女子生徒3「だよねぇ なんでこんな事に巻き込まれているわけ?」
 私    「ゴタゴタがあってねぇ・・・・・とりあえず恋敵ってところかなぁ」
 女子生徒3「里村さん?」
 私    「そう、茜を連れているかどうか確認せずに仕掛けてくるとは、
       間が抜けてると言うか 能天気と言うか・・・」

 「おのれ・・・黙って聞いていれば、言いたい放題」

 女子生徒3「外野は無視でいいよね、で、これからどうするの?」
 私    「向こうが長期戦を望んでいるのなら、付き合ってやるだけさ・・・
       それと、コレあげる」
 女子生徒3「チョコレート!?・・・・あんた、今日が何の日だが知ってるの?」
 私    「バレンタインデー」
 女子生徒3「この日に女の子にチョコ渡すかね? ほんと悪趣味だわ」 
 私    「とは言え 他の手持ちの携帯食となると、干飯と干芋、塩漬肉、炒豆
       これは馴れないとちょっと辛いからねぇ 飴玉は腹の足しにならないし」
 女子生徒3「呆れた普段からこんな物持ち歩いてるわけ?」
 私    「このぐらいは・・・たしなみですから」

 女子生徒3「ねぇ私達ってただのサボりじゃないの?」
 私    「あいつ曰く時間は止まっているそうだから、サボりにはならんでしょ」
 女子生徒3「んー!、天気はいいし、気持ちはいいし、このままサボりでもいいけどなぁ」
 私    「大胆だねぇ・・・この不良少女は・・・・」
 女子生徒3「はいチョコあげる、今ここで食べるのよいい?
       あんたは携帯食とか言って溜め込んでしまいそうだから」

女子生徒3は私から受け取ったものとは別のチョコレートの包みを取り出す
 私    「えーと・・・・んーーーー」
 女子生徒3「あら、意外と遠慮深いのねぇ・・・・・じゃ
       あんたにじゃなくて、トライにチョコあげる」
 私    「ん??・・・・・そう言うことなら、心当たりのある名前はあるよLim」
 Lim 「当たり、最近ちっとも来てくれないじゃない、私は淋しいんだからね」

私はLimのチョコをほうばる
 私  「ごめんよぉ、今ほんとに身辺ゴタゴタしていて・・・余裕がとれない」
 Lim「学校に来れば現実のトライに会えるからいいけど、顔出しだけでもしてよね」
 私  「前向きに検討し善処します」
 Lim「えーと・・・遠まわしにNoって言ってるのね」
  
 「おのれらは・・・・状況と言うものが判っているのか!?
  いつまでもペチャクチャと・・・・・・」

 Lim「ふふふ、トライお得意の心理戦ね 大分じれてきたようだわ・・・意外と短気ね」

 アカネ『呆れたわ・・・ほんと息の合ったコンビだこと あれって一応強敵なんでしょ』
 私  『敵も私なら付け入る隙ぐらい いくらでもあるさ』
 アカネ『それって向こうが仕掛けたんじゃなかった?』

 Lim「トライなら、この状況をどうやって切り抜ける?」
 私  「火力を集中し前面の敵を突破する 奴は私よりも強い」

 〜 発動 〜

屋上:私とLim 敵 アカネ(音声のみ)
(BGM:永遠)

 Lim「そう、アレはトライよりも強いんだ でも、勝ち目はあるのね」
 私  「相打ち覚悟ならね、こっちにも切り札はあるし」
 Lim「じゃ二人がかりならどぉ? アレ倒さないと私も出られないんだし」
 私  「二人がかりか・・・手が無いことも無いか・・・・」
 Lim「じゃ、私はどうすればいい?」

 私  「助けて欲しい」
 Lim「え???? もちろん、助けるわよ、だからどうやって助ければいい?」
 私  「奴には相打ち覚悟で仕掛ける・・・・私の切り札はパワーコントロールが
     まったく効かない・・・・使った方も自滅するんだな・・・これが
     ま、自滅はしないようにがんばってみる  後は瀕死の私を何とか助けてね」
 Lim「うぅ・・だから、どうやって?」
 私  「具体的な方法は判らない・・・なんせ、私は今まで自滅した事が無い」
 Lim「トライ・・・それって”助からない”って言ってるのと同じじゃない?」
 私  「そう? ”私にはLimを信じるって選択肢がある”と言ってるつもりだけど」
 Lim「あ・・・・了解・・・・・・」

 アカネ『姉さんの力使うつもりね・・・あなたまた自分だけ犠牲に・・・』
 私  『それは詩子の一件で懲りた、今回はLimにも犠牲をはらってもらう
     二人でここを切り抜けるさ 私一人、Lim一人脱出できても意味は無い』  
 アカネ『あなたの言ってる犠牲って?』
 私  『Limにとっては辛いことだと思う』

 「やっと、闘う気になってくれたようだね・・・嬉しいよ」

 私  「闘う? ただ、目の前の障害物を排除するだけさ・・・」

 「やれやれ、君は力の差と言うものをまったく判っていない」

 私  「Lim 君に隠し事をするのは無しにしよう・・・・トライシーカー最後のスキル」

私は右腕を水平に上げる
 私  「愛は光   すべてを切り裂く激情の刃
     優しさは闇 すべてを飲込む底無しの檻
     人の魂の底に眠る砕かれし夢のかけら
     その無念我が元に集いて力となれ・・・・」

 Lim「カオスワード・・・魔法剣? 魔道士?・・・」

 私  「今こそ共に滅びの道を歩まん」

そして私の右手に・・・・
 Lim「木刀!??? トライ、あなた・・・それの何処が切り札なのよ?」
 私  『姉さんの木刀・・・・それを・・・使わないで・・・』

 「破滅の力だと!」
 
 私  「私が私ならば使えて当然だ、障害物は排除するのみ!
     私とオマエに力の差など無い しょせん私に過ぎん
     あるのは私を支えてくれる者の力の差だ」

ゴツッ・・・・鈍い音と共にもう一人の私が霧散する そして、崩れ落ちる私 
(BGM:遠いまなざし)

マットをひずって来るLim
マットに私を寝かして、つついてみる
 Lim「ツンツン・・・約束通り、生きてはいるようね
     それにしても時間は止まったままね・・・・
     あれ・・さっきの木刀何処行った?」
 
見まわしてみるが木刀は見当たらない
 Lim「トライ、現実の私はLimとは違うのよ
     現実の私はね、我が身可愛さにクラスメイトを
     平気で苛められる女なの、あなたは里村さんの御手付きみたいだし
     あなたを置き去りにしたら、私は逃げられそうよね」

 アカネ「それだけはさせない」

アカネが姿を現す

 Lim「どなた?」  
 アカネ「そんな事どうでもいい その人を置き去りにするなんて絶対にさせない」
 Lim「そう、あなたもそういう人なのね
     羨ましいな、里村さん、詩子さん、そしてあなた
     トライにはいっぱい友達が居て・・・・
     Limにはねトライしか居ないの・・・・」
 アカネ「リムさん?」
 Lim「私だったら、このままトライを置き去りにして逃げたでしょうね
     でもね”Limを信じる”って言ったのよ
     Limはトライを裏切れないじゃない・・・・」

Limは私を抱き起こす
 Lim「正直、辛いのよ、”自分の理想の自分になれ”って
     言われたようなモノだから・・・もしも、あの時、里村さんを苛めるのを
     断っていたら・・・・でも、それだとトライがこんなに近くに居てくれたのに
     気がつかなかったのかもね・・・・」

Limは私を抱き寄せる
 Lim「あ・・・・トライの心臓高鳴ってる・・・ふふふ 感じてはくれているのね
     ・・・・えーっと・・・出来れば覗かれたくは無いんだけど」
 アカネ「ご、ごめんなさい」
慌てて後ろを向くアカネ

 どん!・・・・突き飛ばされたLimが尻餅をつく 時が動き始める
(BGM:オンユアマーク)

 Lim「痛たたたた・・・・トライ酷いよぉ、突き飛ばすなんて」
 私  「えっ? えっ? えーーーーっ!!」
 アカネ「リムさん現実のこの人は人間嫌いだから・・・・・・」
 Lim「ほぉー その割にはずいぶんと偉そうな事を言ってくれたわね」

Limが私に飛び掛る
 Lim「先ずは私のチョコを全部食べてもらおうじゃないの・・・・
     ・・・・それと、干芋だして・・・ね」

 Lim「あなたにはこれ」

Limはさっき私から受け取ったチョコレートを半分をアカネに渡す
 アカネ「アカネって呼んで この人の従妹と言う事になってます」    
 Lim「従妹のアカネちゃんね よろしく・・・・」

 アカネ「あ、夕焼け・・・・」
 私  「夕焼けって・・・・時間が止まってたんじゃなくて、時間に取り残されてたって事か・・・・」

屋上の扉より茜登場
 茜  「ずいぶんと がんばっていたようですね・・・・・
     それにアカネちゃんまで・・・・」 

屋上の入り口近くに敷かれたマットの上には、チョコレートの包みが数種と
和紙に包まれた干芋が置かれている
 Lim「トライ・・・私達ってもしかして・・・・」
 私  「バレンタイン当日に授業をサボって屋上で宴会していた不良生徒」
 Lim「うみぃ・・・・内申点がぁ・・・・」
 茜  「知りません」

 〜 春の霞 〜

(BGM:乙女希望)

里村家の春の年中行事は、梅の花見に始まって
桜、八重桜、藤、五月(さつき)に至る、花見オンパレード

今年は、桜まではこなした、ほぼ毎週花を見ながら
甘いものを食べ続けると言う、苦行にも似た強行軍が延々と続く
ただ今年は決定的に賑わいを欠いていた

桜の木の下:私、茜、アカネ、Lim
 茜  「詩子は今日も来ないつもりでしょうか?」
 Lim「お祭り事好きそうなタイプに見えたんだけど」

やつれた詩子登場
 詩子 「茜・・・・おひさぁ・・・・」
 茜  「詩子どうしたんですか?」
 詩子 「茜は・・・・あたしの恥を聞きたいのねぇ・・・ふぇーん」
 茜  「絡まないで下さい」
 詩子 「うううぅ、出席日数ぎりぎりで・・テストもダメで・・補習があって・・・
     なんとか進級したら・・・・無理が祟って体壊して・・・」
 私  「詩子 オマエ・・・・・」
 詩子 「あたしに触んないで!!」

詩子が私の手を振り払う
 詩子 「・・・・ごめん・・・まだ神経逆立ってるみたい・・・迷惑かけそうだから、もう帰るわ」

Limが詩子の進路を塞ぐ
 詩子 「たしかあんたは・・・・こないだ あたしを不信人物呼ばわりした失礼な女」
 Lim「Limと呼んで下さい 幼馴染で欠食児童の詩子さんですよね?」
 詩子 「リムさん? ネットゲームの?」
 Lim「はい 詩子が居ない間に、トライとLimの正体がばれたりといろいろあったんですよ」
 詩子 「トライって・・・あいつの事だったよね、結局クラスメイトだったわけ? あははははは」
 Lim「こんな時 独りで居たら 余計落ち込むだけだから・・・・」
 詩子 「あいつの周りに・・・茜が居て、アカネが居て、リムさんが居て、私が居て
     これで人間嫌いが勤まるんだから大笑いだわ」
 私  「悪かったな」
 Lim「ほんとに、私はトライに突き飛ばされたんですよ」
 詩子 「私なんか、あいつに腕を掻き毟られた」
 茜  「あなたは二人にいったい何をしたんですか?」
 私  「これじゃ私は極悪人じゃない・・・・うみぃ」

モノローグ:詩子 
 ・・・・そっか、リムさんもあいつと あたしは急ぎすぎただけかな?
 あたしの負けと決まったわけでもないのね

 Lim「で・・・詩子 アカネちゃんって何者ですか?」
 詩子 「見てはならないモノを見たわけね・・・複雑怪奇な事情のある人物だけど
     根っからの悪人だから安心していいわ、些細な事には目もくれない」
 アカネ「お二人さん何を話しているのかな?」
 詩子 「勿論アカネちゃんの悪口ぃ」

席を立つ私

 「平和だな・・・本当に平和だな」

 『意外だね 君が茜以外に興味を持つなんて それなのにどうしてボク達に茜を渡してくれないのかな?』

 「私ならばその理由は判っている筈だ、私はまだ諦めてはいない」

 『でも・・・君にも判っている筈だよ、すべてのボク達は挫折した』

 「だが、不測の事態は起き続けている、そして新しい可能性もまた」

 『それでも、すべてのボク達は挫折した・・・・君もまた同じさ』

 「すべての私は最後まで希望を捨てなかった」

 『そうだね、でも、君もいつか挫折するよ・・・必ずね』

 「その時が茜の寿命の尽きた後ならばいい・・・・叶わぬ夢でもあるまい?」

 『君は強いな・・・うん・・・でも、ボク達は君の力を試させて貰うよ』

 「ご随意に、どうせ避けては通れぬ道だ ただこの間のような無粋な真似は止めてくれないか?」

 『アレはボク達の手違い、ボク達は茜以外には興味は無い だけど君がボク達と同じになった
  後はどうだろう? 君は茜以外にも興味を持っている』

 「良くも悪くも私の代で終わるさ」

 『でも君次第、茜以外の人間がどうなろうとボク達は構わない』
 
 Lim「トライー! 干芋持って無い?」
 私  「おっと、お呼びだ 何かあればまた声を掛けてくれ」

 『ああ、そうするよ 茜によろしく』
 
 私  「ほい」

Limに和紙の包みを手渡す
 Lim「ほっとする甘さね」
 私  「ま、茜印の花見菓子に比べたらね」

 アカネ「あなた 今誰と話していた?」
 私  「自分と・・・・」
 アカネ「結局あなたは皆を泣かせるつもりなのね」
 私  「誰かの破滅と引き換えに他の一人を幸せにするよりはましだと思っている」
 アカネ「だけど・・・あなたは一人なんだよ 破滅する一人があなたになるだけ」
 私  「墓穴を掘ったな・・・私が目指すのは、私も救われる道さ」
 アカネ「墓穴を掘って救われる事無く終わる気がするよ
     このままでも、あなたは一人だけは幸せにできるんじゃない?」
 私  「止めよう、その条件はあかね以外の誰かでしかない」

第2章(5)へ続く


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