美少女お手伝い戦隊 メイドエンジェル

                  原作:wen-li
                  脚本:久部蝉

〜 第1話 彼の岸から手紙 〜

黒バックにテキスト表示のみ:

ナレーション:

 一筆啓上
 祇園精舎の鐘の音がいっそう侘しく響く今日この頃
 あなた様は如何にお過ごしでしょうか?

 早いものであなた様と出逢ってもう3年にもなります。
 その節には大変お世話になりました。

 私はまだステーションの・・・・撤去・・・作業に・・・
 忙しい・・・毎日・・・を・・・
 (ナレーションフェードアウト)

商店街の雑居ビル地下ゲームセンター:
ゲームに興じる丸刈り学ラン中学生(その他エキストラ数名)

 ゲームセンター入り口から入ってきた
 ブレザー制服のちょっと小柄な女子中学生が
 テーブル筐体の学ラン中学生の対面に腰を下ろす

 女子中学生「楽しそうね」

 女子中学生に声を掛けられてハッと顔を上げる学ラン中坊

 中坊   「メイド・・・・エンジェル・・・・・」

 女子中学生「はい♪ 校則違反の現行犯です」
 女子中学生「貴方には二つの選択肢があります」
 女子中学生「ここで私達に更正を依頼しますか?」
 女子中学生「正規の手続きをとって生徒会裁判にかけますか?」

女子中学生は胸のポケットからカンペ(カンニングペーパー)を
取り出して犯罪者の権利を読み上げる

 女子中学生「ちなみに悪人さんには人権はありませんから」

女子中学生は満面の笑みを学ラン中坊を投げかける

 中坊   「では・・・勝って帰ることにします・・・」

そう呟いて学ラン中坊はテーブル筐体を飛び越えて女子中学生に飛びかかる
女子中学生は体(たい)をさばいて学ラン中坊をかわす

 女子中学生「私達に勝って  ですね 了解です」
 女子中学生「でも 表に出てくれません?」
 女子中学生「ここは圏外なの」

悪趣味な人形のストラップが付いた携帯電話を振る女子中学生

 女子中学生「変身出来ないと 手加減してあげる余裕が無いの」

女子中学生は左足に重心を残しながら腰を落として踏み込む
踏み込んだ右足に重心を移動すると同時に両腕を突き出す

女子中学生の両手は学ラン中坊の胸の手前1cm程度の所で止まる

 女子中学生「ねぇ外に出てくれない? でないと・・・」
 女子中学生「外で待ってるみんなが来ちゃうんだけど」

と、女子中学生は学ラン中坊に満面の笑みを投げかける
自分の胸の前で止まっている両手を冷汗を流しながら見つめる学ラン中坊
ごくりと生唾を飲み込む

商店街 通りに面したゲームセンターへの下り階段:
挙動不審な4人の制服姿の女子中学生が腕時計を見ながらたむろする
リーダとおぼしき長身で長い縦ロールの髪の少女が口を開く

 女子中学生1「時間ですね 踏み込みましょう」

4人の女子中学生はそれぞれ携帯電話を取り出して構える
その携帯電話には、それぞれデザインは違うが
悪趣味な人形のストラップが付いている

そこへ階段を上ってくる 女子中学生と学ラン中坊

 女子中学生2「朱美 どうだった? 捕まえたの?」

金髪の少女が階段を上がってくる女子中学生に尋ねる

 朱美    「あは♪ バトル希望なんだって あはははは」

多少上気した表情で楽しげに答える「朱美」と呼ばれた女子中学生
朱美の返答を合図に何処からとも無く現われた黒子集団が
ゲームセンター入り口に横断幕を掲げ ひな壇やパイプ椅子を次々と並べていく
そして・・・・横断幕に書かれた文字は・・・・・

          ・
          ・
          ・
          ・

 「美少女お手伝い戦隊 メイドエンジェル 公開処刑ショー」

          ・
          ・
          ・
          ・
 ・・・・・と

程なく野外舞台のセッティングが終わり 
この商店街の一角にぼちぼちとギャラリーが集まり始める

その舞台の袖から時折キーンとハウリング音を出しながら
マイクを持ったブレザー制服の男子中学生が朱美を含む
女子中学生の一団に近づいてくる

 男子中学生 「音声さん まだハウリングが出てるよ調整急いでね」

 女子中学生2「朱美ぃ 彼氏がこっちに来るよ」

上気した朱美は俯きながらモジモジしはじめる

 朱美    「西瓜ちゃん・・・・ひどい 」
 女子中学生2「“スイカ”って・・・・確かに私は”翠香”だけど」(アクセントに注意)
 朱美    「頭を割ってあげる」
 翠香    「じゃ 彼の目の前でスイカ割りしてね♪」

クイっと可愛く朱美の方に頭を傾ける翠香

 朱美    「うぅぅぅ・・・・・」

そんな二人のやり取りをよそに男子中学生がやってくる
男子中学生に歩み寄る女子中学生1

 女子中学生1「生徒会長 ご苦労様です」
 生徒会長  「校区内の治安維持も正義を啓蒙するショーも」
 生徒会長  「生徒会の仕事だから”御苦労”って訳じゃないよ」
 女子中学生1「ただの社交辞令です 間に受けないで下さい」

 生徒会長  「そう言う生真面目な所は姉さんにそっくりだね」
 女子中学生1「あの人の事は言わないで下さい」

姉の話題に目を伏せる女子中学生1
二人の様子をジト目で睨み付ける朱美 朱美を茶化す翠香

 翠香    「朱美ぃ ヤキモチ? 目が怖くなってるょぉ♪」
 朱美    「え?・・・・あ????」

慌ててその場を取り繕う朱美 そんな一団の様子を物陰から伺う人影
その人影にチラリと視線を投げる生徒会長

 生徒会長  『鳩羽さんも来ているみたいだし・・・・・・』
 生徒会長  「で、悪役さんの準備はどぉ?」

後手に縛られて椅子に座られられた学ラン中坊にメイクをしている
女子中学生に声をかける生徒会長
生徒会長に方へ顔を上げるメイクさん

商店街 立て看板の陰:
ここから ショーの準備を進める仮設舞台を望む女子高生
おもむろにポケットから携帯電話を取り出してどこぞに連絡をつける
その携帯電話には朱美達と同じ様な悪趣味な人形のストラップが付いている

 女子高生  「姫様 またメイドエンジェルがバカな事をやりはじめたわ」
 女子高生  「場所? 場所は商店街 公開処刑の準備始めてるから来れば判るわ」
 女子高生  「それから・・・被害者は男の子が1人 」
 女子高生  「ゲームセンターでメイドエンジェルに補導されたみたいね」

妖しげな研究所:
何人かの白衣の研究員の間を甲斐甲斐しく動き回っているエプロン姿の少女
少女の携帯電話が鳴り 電話を受ける

 電話の声  『ゲームセンターでメイドエンジェルに補導されたみたいね』
 少女    「わかったわ すぐそっちに行く」

少女は携帯電話を切り”所長”と書かれた札のある机に座っている男に向かい

 少女    「父様 解放戦線機構”まいど・あんげる”出動します」
 所長    「うむ、任せた」

少女の”出動”の声に呼応してガタンと・・・・・
えー・・・周りのモノをひっくり返しながら
ドンガラガッシャーンと二人の研究員が席を立つ

 所長    「帰ってきたら ちゃんと掃除してね」

所長はうんざりとした顔つきで立ち上がった二人の研究員をたしなめた

商店街 仮設舞台:

マイクを持って舞台中央に立つ生徒会長

 生徒会長  「お集まりの皆々様 これより」
 生徒会長  「校則違反を犯した極悪不良生徒の公開処刑を開催します」

生徒会長の”開催”を合図に仮設舞台の幕が開き
上手に朱美、翠香を含む女子中学生5人
下手に両手を後手に縛られ、腕も胴に縛られ足枷を支柱に繋がれた学ラン中坊
生徒会長は進行のお姉さん(生徒会執行部員)にマイクを渡して退場

黒子がそれぞれの女子中学生の前に名前の書かれたプラカードを掲げる

 朱美    :”竹内朱美”
 女子中学生1:”新城すみれ”
 翠香    :”井上翠香”
 女子中学生3:”月山蛍”
 女子中学生4:”立川椎音”

”新城すみれ”のプラカードで紹介された女子中学生1が携帯電話を掲げて叫ぶ 

 すみれ   「インディビデュアル・クリーンアップ!!」

残りの4人も同様に携帯電話を掲げて叫ぶ

 一同    「インディビデュアル・クリーンアップ!!」
ボムっと仮設舞台にスモークが焚かれ一面に白煙がたちこめる

白煙が引いて舞台に立つ変身後のメイドエンジェル
舞台中央に進行のお姉さんが立つ
(ナレーションと舞台進行のお姉さんの音声をダブらせる事)

ナレーション/お姉さん
 インディビデュアル・クリーンアップとは、少女達の正義を愛する心が
 頂点に達した時八百万の神々のお力を得・・・・・
 (取り合えず取って付けたような妖しげな解説をアドリブで)

お姉さんの妖しげな解説が続く中 変身後のメイドエンジェル達の
前に居る黒子達がプラカードを反転させる

反転されたプラカードには・・・・・

 反転前の文字      反転後の文字
 ”竹内朱美”  → ”メイドバーミリオン”
 ”新城すみれ” → ”メイドバイオレット”
 ”井上翠香”  → ”メイドビリジアン”
 ”月山蛍”   → ”メイドバディター”
 ”立川椎音”  → ”メイドバンダイキ”

の文字

ナレーション/お姉さん
 ・・・・正義に奉仕する純粋なる汚れ無き魂を象徴し・・・・・

妖しげな解説が続く中、(メイド)バンダイキが屈み込んで
自分の前に居る黒子に話しかける

 バンダイキ  「何度言ったら判るのかしら? 私はバンダイキじゃなくて
        ヴァン・ダイクよ」

そう言いながら黒子のうなじに手を回し、頭巾の端からはみ出した
肩まである黒子の髪を1本・・・ぷちっと引き抜く

 黒子     「つっ・・・」

髪を引き抜かれた黒子が思わず声を上げる

 バンダイキ  「あら、黒子が声なんか出しちゃだめよ」

バンダイキはメイド服の懐から和紙を取出し、黒子の髪を和紙に挟んで
再び懐にしまう

 バンダイキ  「ふふふ、今日はこのくらいにしておいてあげる」

立ちあがるバンダイキ

ナレーション/お姉さん
 ・・・・御国に仇なす不届きモノに今こそ正義の鉄槌を・・・・・・・

”鉄槌”の言葉に反応して、バディターがつかつかと学ラン中坊に歩み寄り
手に持った物干し竿をカチリと音を立てながら引き抜く

バディターの手に握られている スリガラスのようなくすんだ透明感の有る仕込刀
すっと、刀を上段に構えるバディター

ナレーションの声終了、ここからはお姉さんの声のみ

状況が読めずに困惑するお姉さん

 お姉さん   「ちょっ・・・ちょっと・・・蛍さん?」

 バディター  「成敗!」

バディターは上段に構えた仕込刀を学ラン中坊に向かって振り下ろす

 お姉さん   「ひっ!」

短く悲鳴を上げるお姉さん、バディターの凶行に会場がどよめく
はらりと学ラン中坊の腕を縛っていた縄が切り落とされる。
(両手はまだ後手に縛られたまま)

 観客1    「あの縄って・・・演出?」
 観客2    「彼女の刀・・・・本物っぽく見えるけど・・・?」

お姉さんの方に振りかえるバディター そして生気のない表情で

 バディター  「あなたが変な声上げるから 手元・・・狂ったじゃない」

お姉さんの方に向いたまま学ラン中坊の足元に落ちた縄に視線を投げるバンダイキ
学ラン中坊が無事なのを見てへなへなとへたり込むお姉さん

つかつかと舞台袖から生徒会長登場 へたり込んでいるお姉さんからマイクを取り上げ

 生徒会長   「悪人を成敗するのもいいが、慈悲の心を見せるのも重要だよ
         君達メイドエンジェルは正義の味方であって、殺人集団では無い」

プラカードを持っていた黒子達に目配せで合図をする生徒会長
黒子達は腰の抜けたお姉さんを引きずりつつ退場

生気の無い表情のままのバディターが生徒会長に反論する

 バディター  「悪党の命は虫けら同然じゃなかった? 」
 生徒会長   「真の悪党とは更生の余地の無い者の事を言う 彼が再犯をしたのなら
         バディター君の好きな様にすればいい 今は君の慈悲を見せた方がいい」
 バディター  「そう・・・なら・・・・そうするわ」

バディターはチャキっと音をさせて仕込刀の刃を上に向けながら学ラン中坊のほうへ向きなおす
学ラン中坊はその場から逃げ出そうとして、足枷に引っ張られしりもちをつく

 中坊     「ううっ・・・うう 」

良く見ると短く唸る学ラン中坊の口の中に黒いボール状の物が見え隠れする
伏せ目がちにバディターが学ラン中坊にしか聞こえない小さな声で話しかける

 バディター  「あまり痛くはしないから、隙を見て逃げて」

パシっと仕込刀の峰で学ラン中坊を打ち据えるバディター
そして刀を引くと見せかけて学ラン中坊の足枷を斬る

 中坊     「う?」
 バディター  「うん」

短く、そして優しく頷くバディター

       そして その時 アハハハハ と高らかな笑い声が響く

 声      「それ以上の暴虐は許しません!!」

 〜 アイキャッチA 〜

    CM

ナレーション:
 DoKoMoよりMaidAngelLine 大好評絶賛新発売中!!
 何とピッチ番号から加入者検索も加入者名から番号検索も自由自在
 プライバシーも個人情報保護もあったもんじゃない
 (それよりも、なぜ「新発売」が「大好評絶賛中」なわけ?)←ナレータの心の声

 ただ・・・・固定電話や携帯電話の検索には別途専用端末が必要です
(ダメじゃん)←ナレータの心の声

 〜 アイキャッチB 〜

 声      「それ以上の暴虐は許しません!!」

とぉっても、わざとらしくきょろきょろと応対するバーミリオン

 バーミリオン 「何処だ! 何処だぁ!!」

バーミリオンに調子を合わせるビリジアン

 ビリジアン  「そこだぁ!!」

ビリジアンのMG34ライトマシンガンが仮設舞台の正面にある
建物の屋上付近向けて放たれる

仮設舞台を望む建物の屋上:
屋上に4つの人影、パパパパパっと建物の壁面にMG34の真っ赤なペイント弾が弾ける

 男      「ぶっ!!」

 屋上の4人の右端に居た男の顔面をペイント弾が直撃する
 ペイント弾の真っ赤な顔面にギンと眼光が輝く

 男      「この程度でこの俺を倒せると思う・・・な  え?」

気配に気付いて横を向くと残りの3人はペイント弾を避ける為にさっさと伏せていた

 男      「え?」

怪人ペイント男(たった今命名)が、また気配に気付いて正面を向くと・・・・・・

パパパパパパパパパ!!
屋上に一人残った怪人ペイント男に向けて集中砲火を浴びせるビリジアン

 ペイント男  「∬ωΦ∵♀Θ∽♂!」

どどどっと 屋上に崩れる怪人ペイント男・・・・そして屋上には既に人影は無い・・・・・・
男の倒れたところには真っ赤な(ペイントの)染みがじわじわと広がる

 ビリジアン  「ばーか」

商店街 仮設舞台前:

ダダダダダダ!と階段を駆け下りる音に続いて、ドンガラガッシャァーンって音と共に
仮設舞台正面の建物から何かが飛び出してきて道に横たわる

その物体に近寄って、ツンツンと竹ぼうきでつつくバーミリオン
物体がむっくりと起き上がる

 物体     「おのれ メイドエンジェルめ姑息な罠を・・・」

ふらふらと目を回した物体が明後日の方向を向いて抗議する

 バーミリオン 「罠って・・・勝手に階段から転げ落ちただけじゃない・・・・」

 物体     「この後に及んでまだ そんな言い訳を!」

 商店街の街灯に向かってファイティグポーズをとる目を回している物体

 バーミリオン 「・・・・はぁ・・・・バンダイキさん この人の事お願い」
 バンダイキ  「はいはい」

バンダイキは物体が攻撃体勢をとっている街灯の根元に有る扉を開けて
中のサービスコンセントに自分の杖のプラグを繋ぎ
そして、その杖を男に付き付ける

商店街内の何処かの店舗:

ジジジと言う音ともに一瞬店内の照明が暗くなって元に戻る

商店街 仮設舞台前:

ぐったりと杖に持たれかかっている物体を抱きとめるバンダイキ

 バンダイキ  「まったく・・・手間の掛かる」

ぶつぶつと文句を呟きながらも動かなくなった物体を商店街のベンチに横にする

街灯根元のサービスコンセントの黒ずんだスパーク跡をクローズアップ

仮設舞台正面の建物入り口で階段を駆け下りて息を切らせている少女

 少女     「はぁ、はぁ・・・・」

少女の後ろからメイドエンジェル達と同じ様なメイド服の女性が現われる

 メイド服女  「姫様 お召し物が乱れています」

はだけかけていた少女の胸を正すメイド服女 少女は凛と胸を張り

 少女     「我ら町内解放機構”まいど・あんげる”が居る限り
         あなた方権力者の好きにはさせません!!」

少女に反論するメイド服女

 メイド服女  「しかし、姫様既に二人倒されてしまいましたが?」
 少女     「うぐぐぐ・・・・あなたがなんとかしなさい!」
 メイド服女  「御心のままに」

舞台上から一連の光景を眺めていたバイオレットが口惜しそうに呟く・・・・

 バイオレット 「姉さん・・・・ん?」

スタッフ、観客一同の注意が正面の建物で起きている騒動に向いている内に
逃げ出そうとしている学ラン中坊の気配に気付くバイオレット
1度メイド服女の方に視線を投げて、学ラン中坊の方に向きなおす

 バイオレット 「逃がしません」

バイオレットの姿が背景の中に溶け込むように消える
舞台の上では、学ラン中坊に「早く逃げろ」と目配せで指示を出しているバディター
念の為向かいの建物の屋上にMG34の照準を合わせているビリジアン
そして、何処か嬉しそうにしている生徒会長

舞台前では、バーミリオンが竹ぼうきと文化ぼうきを繋いだ変形二節根で
メイド服女に殴りかかっている
手甲でバーミリオンの二節根を受け流すメイド服女

 メイド服女  「朱美ちゃん元気そうね」
 バーミリオン 「鳩羽さんこそ高校生になって少し太ったんじゃない?」

ガシっ! メイド服女は側頭部を狙った文化ぼうきを手甲で受けて、
そのまま腰を落として足払いに入る

 メイド服女  「気苦労がなくなったからね ”前がやつれてた”って言って欲しいわ」

小ジャンプして足払いをかわすバーミリオン

 バーミリオン 「ひどーい やつれたのは私達のせい?」

メイド服女は空中に居るバーミリオンに向かって掌底を突き上げる

 メイド服女  「そうよ 肩の荷が下りてほっとしたわ」

バーミリオンは空中で身体を反らして嘗底を避け、メイド服女の腕を掴み
投げの体勢で引き込む

 バーミリオン 「あ・・・・」
 メイド服女  「朱美ちゃん・・・・少しは自分の体格の事考えたら?」

メイド服女の腕にしがみついたまま、ぷらぷらとぶら下がっている小柄なバーミリオン

 バーミリオン 「えっと・・・・鳩羽さん許して!」

満面の笑みをメイド服女に向けるバーミリオン

 メイド服女  「許さない」

そのまま、バーミリオンを抱きしめるメイド服女

 バーミリオン 「きゃあぁぁぁ〜〜〜〜♪」

街灯の脇、ベンチに座っているバンダイキの所へ歩み寄る少女

 バンダイキ  「間抜けな敵役 ご苦労様 これで何とかなりそうだわ」

ベンチに座ったまま悟られない様に視線だけを仮設舞台に投げるバンダイキ

 少女     「それはどうも・・・で、彼は大丈夫?」

ベンチに寝かされている物体に視線を投げる少女

 バンダイキ  「姫様の所で作ったアレがただのスタンガンなら大丈夫の筈よ」

街灯の根元に置かれた杖に目配せをするバンダイキ

 少女     「じゃ、大丈夫のはずね・・・あと、身内以外に”姫”と呼ばれたくないわ」
 バンダイキ  「どう呼んだらいい?」
 少女     「”舞”って呼んで下さいまし」
 バンダイキ  「”舞姫様”ね・・・・」
 舞      「あなた・・・いい根性していらっしゃいますわね」

 キーン 耳障りなハウリングと共に大音量の声が響く

 声      「マインド・クリーニング」

その声に一同舞台の方へ振り向く、上から吊るされたマリオネットの様に
不自然な体勢で舞台に立っている学ラン中坊
学ラン中坊の首筋から一条の鮮血が流れ落ちる

その光景を見たメイド服女が口惜しそうに唸る

 メイド服女  「くっ・・・・」

腕の中のバーミリオンが心配そうに顔を上げる

 バーミリオン 「鳩羽・・・さん・・・?」

無言でバーミリオンを離すメイド服女 そしてゆっくりと仮設舞台へ歩いて行く

商店街 仮設舞台 不自然な体勢で立っている学ラン中坊
仮設舞台に上がるメイド服女

 メイド服女  「すみれ・・・・あなたまだこんな事を続けてるの?」

何処からともなく声が響く

 声      「姉さん 正義は必ず勝つわ 姉さんこそいったい何やってるの?」
 メイド服女  「わたしは何もしてないわ・・・・ただね
         薬で悪人を更生するのは、やり過ぎだと気が付いただけよ」

学ラン中坊の背後に、背景から染み出す様に姿を現すバイオレット
バイオレットは学ラン中坊を後ろから支える様に立っていて
縦ロールの髪に付けられた蠍の尾の様な物体が学ラン中坊の首筋に刺さっている

バイオレットはゆっくりと学ラン中坊を舞台に横にして、首筋から蠍の尾を抜く
また一条鮮血が舞台に落ちる

 バイオレット 「去年までは姉さんだってやっていた事じゃない」
 メイド服女  「薬物療法はメイドエンジェルのリーダー 
         つまりバイオレットに与えられた特権ね 反抗的な人を従順にさせる薬
         更生させる、改心させると言えば聞こえはいいけど・・・・・ね」

 バイオレット 「姉さん・・・答えになってない」
 メイド服女  「じゃぁ、私は自分の事を棚に上げて、あなたを非難してるのよ 満足?」
 バイオレット 「私は・・・姉さんを尊敬してました・・・でも、今のあなたは・・・・」

 メイド服女  「正義は必ず勝つ・・・か・・・ねぇ、すみれ ファシズムって知ってる?
         あなたの言っている正義って誰の為の正義なんだろうね?」

メイド服女はバイオレットに背を向け離れる
舞台から去るメイド服女に生徒会長が声をかける

 生徒会長   「鳩羽さん すまない僕が至らないばかりに」
 メイド服女  「あなただけのせいじゃないわ 愛国学園はそういう学校だから・・・・」

口惜しそうに目を伏せるメイド服女

 メイド服女  「舞 もう帰るわ今日のミッションは失敗」
 バイオレット 「姉さん、逃がしません!」

メイド服女はバイオレットに背を向けたまま話す

 メイド服女  「すみれ 何?これからカーテンコールでもするつもり?
         申し訳ないけど付合ってられないわ」
 バイオレット 「そんな事言っているんじゃありません!!」

 メイド服女  「そう・・・じゃすみれ 良く考えてみて 私達はただの観客だった筈よ
         その私達に一方的に仕掛けて来たのはあなた達じゃなくて?
         ビリジアンの射撃も、バンダイキのスタンガンも、そして
         バーミリオンの暴行も・・・・・でもね
         私達は、観客と一体感を出す為の演出だったと理解しているから
         それに付いてどうこう言うつもりはないわ・・・・・・・・」

 バイオレット 「・・・・姉さん  あなたは・・・・」
 メイド服女  「これ以上 何かする様なら”愛国学園の生徒に暴行された”って
         出るところに出るけどそれでもいい?」
 バイオレット 「姉さん!!」

 メイド服女  「簡単な理屈じゃない”権力を正義”と言うのなら”より強大な権力”は
         ”より強大な正義”そして、正義は必ず勝つんでしょ そ・れ・だ・け」

メイド服女に駆け寄る舞

 舞      「鳩羽 妹さんの事あれでいいの」
 メイド服女  「いいの、ホントにすみれは頭が固いんだから アハハ」

淋しそうにカラカラと笑うメイド服女 舞が一同の方に振りかえる

 舞      「それから、ウチの二人 目を覚ましたらさっさと帰る様に言っといて」

唖然とするメイドエンジェル一同

 バーミリオン 「姫様・・・部下使いが荒い・・・・」

バイオレットが吐き捨てる様に呟く・・・・

 バイオレット 「・・・姉さん・・・あなたは・・・間違ってます」

暗転

妖しげな研究所:

ドンガラガッシャーンとなった研究所を掃除している 怪人ペイント男と物体
心なしかモサモサと作業をしている物体

 ペイント男  「おーい、真面目に掃除しろよ」
 物体     「すまない、まだ痺れが残ってて」

腕を回して痺れの具合を確かめる物体

 ペイント男  「そうか・・・・」
 物体     「お前こそ その顔はなんだ?」
 ペイント男  「あぁ、防犯用のペイントらしくてな 一週間は色が落ちないそうだ」
 物体     「俺達は犯罪者扱いか?」
 ペイント男  「まったく・・・やってられないな  ふふ」
 物体     「まったくそうだ・・・ははは みんな可愛い後輩達だからな」

とある神社:
巫女服姿の椎音(バンダイキ) 懐から和紙の包みを取り出し
包みの中の髪の毛を 和紙製の人形(ひとがた)に入れて
その人形を木の枝に針で止める
同じ様に無数の人形が枝に止められている。

 椎音     「ふふふ、今日はこのくらいにしておいてあげる」

誰かの寝室:
髪の長い少女がベッドに眠っている

不意に苦しみだして自分の胸を掻き毟る少女
しばらくして発作が治まった様でまた静かに寝息を立て始める

掻き毟られてはだけた胸にポツっと小さな斑点が浮かぶ
そして、何かに浮かされたような少女の寝言

 少女     「・・・・ヴァン・・・ダイク・・・さま・・・」

暗転

 〜 次回予告 〜

黒バックにテキスト表示のみ:

ナレーション:

 もしも、私があなた達に出逢わなかったら
 もしも、全ての始まりがそこにあったなら
 もしも、私達の出逢いがそこから始まったのなら

     その始まりの物語を

 次回 「美少女お手伝い戦隊 メイドエンジェル」
    「託されしモノ」

 それではまたお便りします あらあらかしこ
                      M


〜 第1話 あとがき 〜

 あっはーい!ついにはじまってしまっただぉ
 メイドエンジェル 全52話(完結するんだろか? おいおい)
 
 とりあえず第1話はM女史を含めて全レギュラーの顔見せです

 オー!! 百里の道を行くならば九十九里もって半ばと思え!!
 
 ちゃんちゃん
 
PS:さてと・・・・このシナリオをベースに電動紙芝居版を作らねば


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