礎 (ISHIZUE)〜 贄 (NIE)・詩子の物語 〜
〜 第2章 炎のさだめ 〜
〜 AnotherONE 〜
路地:一同(BGM:ハカイダーのテーマ)趣味に走り過ぎかな?
カツーン カツーン カツーン
Lim「トライお願いだから路地を足音響かせて歩かないでくれる」
私 「人が折角いい気持ちでいると言うのに」
アカネ「先輩かっこわるい」
詩子 「うぅぅぅぅ あんたねぇ そのカッコで街中歩かないで」
私 「そーぉ? 普段着だけど?」
詩子 「右足のそれ 良くまぁそんなモノ足につけてまともに歩けるわね」
私 「20mmハンドキャノン ハートブレイカー
ここまで大きいと流石に本物だと思う人はいない」
Lim「でも、それ撃てるんだよね?」
私 「実包があればね・・・ま、規格品の実包にサイズの合う奴は無いし
実包を込めて持ち歩いてもいない
それに、電気発火式で機械的な撃発機構も無いから
これ単体ではスイッチの付いた金属の筒に過ぎない」
Lim「トライ 今物凄く危ない事言ってない?」
私 「そぉ? こいつが法に触れるならスイッチの付いたパイプは全部法に触れるって
言ってるだけだよ 例えば・・・金属製の懐中電灯とかね」
詩子 「やっぱり あんたは怖いわ」
アカネ「先輩そんなに人間が嫌い?」
私 「まぁね・・・・でも好きな奴もいれば 嫌いな奴もいるよ」
詩子 「あんたに嫌われる側に行きたくは無いわ」
空き地:一同
詩子 「アカネ シートを広げて リムさんはお弁当をお願い」
宴会の準備を始める一同
私 「すまないね 連中は立会人代わりだから 準備が済むまでちょっと待っててね」
鎧武者「・・・・・」
中折れ式のハートブレイカーに実包を込めて右足のホルスターに収める私
程なく宴会の準備も終了し空気に緊張が走る
私 「さてと・・・・それじゃ始めますか」
腰の後ろから木刀を抜き 顔の前で刃を上にして水平に構える
右の肩口を鎧武者に向け腰を落とす私
日本刀を抜きそのまま右手に下げる鎧武者
私は刃を翻して上段から鎧武者に斬り付ける
鎧武者は右手の日本刀で木刀を受ける
木刀の剣圧が日本刀に触れる事無く 日本刀を押し下げる
鎧武者は刀に左手を添える
それを見た私は右のローキックを放つ
足を払われて体制を崩す鎧武者の顔面を私の肘打ちが捉える
バックステップで間合いをあけ 私はさっきと同じ構えから平突きを放つ
平突きを受けた鎧武者が後ろへ倒れる
私 「あはははは やっぱ木刀じゃこんなもんか
んーダメージも何もあったもんじゃない」
起き上がり際に中段突きを繰り出す鎧武者 その突きが私の左脇腹をえぐる
着衣の下のチェーンメールが摩擦で火花を上げる
私は右足を軸に中段突きを受け流し 左のハイヒールキック(なんか妖しい)を放つ
この蹴りは空を切り 両者間合いを取り直す
詩子 「リムさんあれじゃあいつ勝てないよね?」
Lim「隙を見て銃を使うつもりなんでしょ そのくらいは向こうも読んでると思うけど」
詩子 「それにしても あいつっていつもあんな感じなわけ?」
Lim「私だって実戦モードのトライは はじめて見るのよ
剣術と体術の併用・・・・それに銃撃・・・」
アカネ「先輩! ガンバレー やっちゃぇー!!」
Lim「アカネちゃん呑気ねぇ」
アカネ「先輩は絶対負けないもん」
詩子 「さっきまで”かっこわるい”とか言ってたくせに」
アカネ「先輩は・・負けない・・・
私は・・・あの人を・・・・見届け・・・」
Lim「そう・・・よし! トライ 負けたら承知しないからねぇ!
そんな奴ギタギタにしちゃぇー!!」
アカネ「リムさん・・・・」
鎧武者「お前の・・・立会人・・・どうにかならんか・・・・」
私 「気にするな いつもの事だ」
鎧武者「苦労するな・・・」
踏み込んですれ違いざまに横一閃 振り向きながら逆袈裟 木刀を返して袈裟懸け
だが・・・ことごとく鎧武者の甲冑に阻まれる
鎧武者の縦一文字 私は半歩サイドステップして左肩で止める
日本刀の剣圧を利用して左半身を引くチェーンメールの上を滑る刃が着衣を切り裂く
左半身を引いた反動を使って右手に持った木刀で鎧武者の兜を力任せに叩き付ける
鎧武者「ふははは・・・・お前・・・強いな」
鎧武者は日本刀を大地に突き立て 両腕を身体の前で交差させて構える
鎧武者「来い・・・」
私 「日本刀より軽い木刀だったから、少しはこっちが有利だったのにな」
私は木刀を逆手に握りなおして身体の影に収める
そして正面から鎧武者に向かって踏み込む 逆手に握った木刀の柄で鳩尾を狙う
鎧武者は木刀の柄を上から押さえ込もうとする
私は逆手に持った木刀を起こして鎧武者の両腕を弾き上げる
同時に牽制の左ソバット ソバットをスウェイしてかわす鎧武者
左腕で着地 そのまま左腕一本で身体を支えて体重を乗せた私の右ハイキック
鎧武者は身体を沈めながら背中を私に向ける
ハイキックへのカウンターを狙った
重心移動を行いながらのタックル
私の骨が軋む
私 「あぐっ!」
弾き飛ばされて大地に叩き付けられる 転がる藍の木刀
私 「うぐぐぐぐぐ」
アカネ「先輩!!」
Lim「嫌な・・・音・・・」
詩子 「リム! あんたはあいつが心配じゃないの!?」
Lim「私達はトライの立会人・・・・それにまだトライは諦めてない」
私 「痛たたたたた・・・・見事に吸い込まれちゃったよ
純粋な体術勝負となると・・・実経験の差は大きいかぁ・・・・」
アカネ「先輩ぃ・・・・」
日本刀を引き抜き私に近寄る鎧武者
鎧武者「負けを・・・認めるか・・・?」
私 「いいや こっちにもまだ切り札は残っている」
鎧武者「お前を・・・待つ者を・・・・哀しませるな・・・・」
私 「あんたが みんなに危害を加えない保証が何処にある?」
鎧武者「馬鹿な・・・事を・・・・」
私 「その可能性が少しでもあるなら 私は諦めない」
鎧武者「死ぬぞ・・・・」
私 「独りでは逝かない」
詩子 「もうやめて さっさと謝っちゃえばいいじゃない」
アカネ「先輩が 死んじゃう・・・・ 先輩が・・・・」
Lim「トライ・・・あなたはそれに命を賭けられるの?
これは・・・・ゲームじゃ無いのよ」
鎧武者「もういい・・・行け・・・お前には・・・お前を待つ者が・・・居る」
私 「私には私を頼ってくれた人が居る
誰であろうとその人を見捨てたりはしない それが私だ」
私はハートブレイカーのグリップに手をかける
鎧武者「お前は・・・・」
アカネ「あの人が・・・・死んじゃう・・・・あの人が・・・」
転がる木刀を手に取るアカネ そして月を仰ぐ(BGM:A Tair)
アカネ「姉さん・・・・姉さんがそこからずっと・・・・
あの人を見守っていたなら・・・・・
あの人を守って・・・・私の・・・・私達の・・・・
たった一人の大切な人を守って・・・・姉さん」
満る月を背負うアカネ 空き地に流れる在りし日の風景
私と・・・藍と・・・茜と・・・詩子と・・・
茜のスカートをめくる私 木刀を振りかざして私を追いかける藍
そんな二人を囃し立てる詩子・・・・・
平和だった日々 ただありふれていただけの日々
ここに・・・・この場所に満ちていた・・・暖かなモノ・・・・
アカネ「姉さんが使う身体は・・・・ここに在るわ!」
〜 狂気を司る月の精霊 〜
古来より西洋では月の光は人心を惑わすと言う
ただ月が人の琴線に触れるから ただそれだけ
(BGM:天草四郎のテーマ MVS版 侍スピリッツより)
木刀を下段に構えるアカネ そして切っ先を少し右に開く
倒れこむように重心を前に移動し そのまま踏み込む
アカネは鎧武者に向かって左逆袈裟に切り上げる
木刀の切っ先が甲冑の部品を弾き飛ばす
アカネ「大丈夫?」
私 「とっても内臓が痛いの えぐえぐ」
アカネ「そう・・・心配は無さそうね 動ける?」
私 「もう少しは無理だな」
アカネ「わかったわ 時間を稼ぐ」
中段突きから横一文字 木刀の切っ先のみで鎧武者を攻めるアカネ
アカネが舞う度に引き千切られた甲冑の部品が舞い散る
Lim「アカネちゃん凄い」
詩子 「藍・・・・藍だ・・・・・」
鎧武者は間合いをあけて日本刀を構えなおす
肩で息を始めるアカネ
アカネ「身体が・・・重い・・・でも・・」
鎧武者の斬撃 アカネの回避運動が遅れる 刃がアカネを掠める
ヒュン! 木刀の切っ先が唸る 鎧武者の左の大袖が弾け飛ぶ
左腕を押さえて下がる鎧武者
アカネ「はぁ・・・ダメージ ひとつ」
Lim「藍って里村藍? 里村さんのお姉さん?」
詩子 「うん・・・あの子 間違い無く藍だ・・・・」
Lim「アカネちゃん憑依れちゃったの?・・・・・うーん・・・」
・
・
・
Lim「藍ちゃんガンバレー!!」
詩子 「リムさん・・・・ちょっと・・・・」
Lim「もともとアカネちゃんだって幽霊みたいなもんなんだし
大勢に影響無しよ」
詩子 「それは そうなんだけど・・・・」
アカネ「詩子と・・・・誰?」
鎧武者「息は・・・・整ったか?」
アカネ「いい気ね 闘いの最中に」
鎧武者「これは・・・試合だ・・・殺し合いじゃない」
アカネ「そう・・・・・あの人の提案?」
鎧武者「いや 奴と剣を・・・・交えたかっただけだ」
アカネ「・・・私は はやまったのかな?」
鎧武者「お前は・・・・なぜ闘う?」
アカネ「あなたがあの人を傷つけたから」
鎧武者「そうか・・・・名を聞こう」
アカネ「藍・・・里村藍・・・あなたは?」
鎧武者「ただの・・・・亡者だ」
藍 「なら モーちゃんね
それに私もただの亡者よ」
鎧武者「いざ 尋常に 勝負」
藍 『あの人の真似 私に出来る?』
藍の小足払い バックステップでかわす鎧武者
次の瞬間下段から大きく弧を描く藍の斬撃が鎧武者の足を捉える
藍 「ダメージ ふたつ目」
鎧武者の起き上がりに横一閃を重ねる
ガードを固める鎧武者の腕を掴み足を絡めて投げる
Lim「確か藍ちゃんって剣道家って話だったよね?」
詩子 「そうなんだけど・・・・」
Lim「トライみたいな動きしてるんだけど・・・・」
詩子 「だよねぇ・・・・なんで?」
Lim「私に聞かないでよ 幼馴染なんでしょ?」
詩子 「私だって・・・・藍に会うのは3年ぶりよ」
藍 「甲冑を何とかしないと・・・勝てない」
鎧武者のショルダータックル 藍は木刀で鎧武者の右の大袖を弾く
鎧武者はタックルをキャンセルして縦一文字
バックステップでかわす藍 藍の着地を狙って横一文字
(BGM:勝利のポーズ)
足が藍を襲う刃を蹴り上げる 切り裂かれたズボンの下から
チェーンメールの鈍い金属色が覗く
着地と同時に飛び込む藍
弾き上げられた鎧武者の腕の隙間から咽喉へ 藍の突きが入る
藍 「足癖が悪い」
私 「よいしょっと」
両足を回転させた反動で起き上がる私
鎧武者「ふっ・・・・」
間合いをあける鎧武者
藍 「なんのつもり?」
私 「死に場所を探してる 死にたがりさ」
藍 「そう・・・気に入らないわね」
私 「向こうには気に入られたみたいだけどね」
藍 「だから・・・気に入らないの」
Lim「あぁ・・・トライだって3年ぶりなんでしょ!?
なんで、あの二人あんなに息が合ってるのよ!!」
詩子 「リムさん妬いてるの?」
Lim「私だって戦士なのにぃ」
詩子 「悔しい?」
Lim「悔しい!」
藍 「身体が重い」
私 「贅沢言うなよ アカネの身体だ鍛えてるわけじゃない」
藍 「あなたの貸して」
私 「こっちのは妙な癖が付いてるよ」
藍 「そうなの・・・・どうするの?」
私 「正面から突破する 小細工が通じる相手じゃない」
藍 「突破するのは私」
私 「援護はする 突っ込め」
藍 「了解」
鎧武者「話は・・・終わったか?」
私 「ああ」
ハートブレイカーをホルスターから抜く 両足を広げ背中を丸めて
銃を両手に保持して自然に下げる
藍が前傾して踏み込む 私は銃を肩の高さまで引き上げる
撃発 大口径低速弾の低い銃声
衝撃が藍の肩口を突き抜け 木刀の切っ先を先導する
前傾した藍の身体が伸びきる
銃弾と木刀の切っ先は鎧武者の胸を貫く
腕を跳ね上げる事で銃の反動を吸収するチャイニーズスタイルの射撃フォーム
ハートブレイカーの銃口は天を指す 硝煙の昇る先に満る月
鎧武者「見事・・・だ・・・」
藍 「あなた そんなに死にたい?」
鎧武者「・・・・・」
藍 「でも・・・殺してあげない」
藍は鎧武者の胸から木刀を引き抜く
詩子 「ねぇ 終わったの?」
私 「ああ」
二人の所に歩いてくる詩子とLim
詩子 「藍 紹介するね この人はリムさん
えっと こいつのゲーム仲間って所かな?」
藍 「里村藍です」
Lim「Limです トライにはいつもお世話になってます」
藍 「トライ?」
詩子 「トライってのは こいつの事」
詩子が私を指さす
藍 「あなたに・・・新しい友達が・・・・よかった」
藍が鎧武者に視線を投げる
藍 「この子はモーちゃん・・・・」
Lim「モーちゃんって? 藍さんの知り合いだったの?」
藍 「亡者のモーちゃん」
詩子 「藍・・・・あんたセンス悪いよ」
藍 「モーちゃんは負けたんだから これからはこの人の事を守るのよ」
モー 「人間の為に・・・・生きろと・・・言うのか?」
藍 「そう・・・私の分も・・・私はもう行かないと・・・・
私は・・・・あなたの傍にはいつまでもいられない」
藍は私に視線を投げる
アカネ『嫌だよ! 私は姉さんとずっと一緒に居るの』
詩子 「アカネ? あんた無事だったの? 面白くないなぁ」
アカネ『詩子 ひどぉい』
藍 「茜 無理を言わないで 私はもう死んでるの」
アカネ『嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 私は絶対に姉さんと一緒に居るの!!』
藍 「茜・・・・違う・・・茜じゃない」
アカネ『私が掴まえている限り姉さんは帰れない それとも私も一緒に連れて行く?』
藍 「あなたは何者?」
アカネ『私は茜に捨てられた茜 でもみんなは私をアカネって呼んでくれる』
モー 「お前も・・・奴の為に・・・生きろ」
詩子 「藍 あんたにこいつをあげるわ」
私 「詩子 人を物みたいに言うなよ」
詩子 「あら あんたって馬鹿みたいに単純じゃない
あんたは あたしより茜が好き 茜より藍が好き
あんたは絶対に裏切らない・・・・だから・・・
藍はあんたがはじめて好きになれた人間でしょ」
アカネ『姉さんの居場所はここにあるよ』
Lim「ほんと・・・ここは社会不適合者の吹き溜まりね」
詩子 「藍 あんたには大きな借りがあるから ここで返しておく」
藍 「借り?」
詩子 「あたしがあんたを殺したようなもの・・・・
だから 今はこいつをあんたにあげる
でも、そのうち取り返しに行くから首を洗って待ってなさい」
藍 「でも・・・私は・・・帰らないと・・・・」
詩子 「勝ち逃げは あたしが許さないわ」
Lim「そーね・・・勝ち逃げされるのは気分悪いわね
私も藍さんの恋敵なの 忘れないでね」
アカネ『えーと・・・恋敵なら、もう一人ここにも居るんだけどぉ』
モー 「苦労するな・・・・・」
私 「まったくだ」
詩子 「あんたがはっきりしないから いけないんでしょ!」
アカネ『そうだ そうだ 先輩が全部悪い・・・・』
Lim「トライがそんな人だったなんて・・・しくしく」
藍 「みんな・・・・いいの? 私なんかで」
詩子 「藍がいなかったら 今こいつの傍にはきっと誰もいないよ」
藍 「みんな・・・」
Lim「えーっと、藍さんとモーちゃんはトライの家で暮らすのね
詩子は今夜はどうするの?」
詩子 「口実通り リムさん家に泊めて・・・・
今夜こそあいつをモノにするつもりだったのになぁ」
Lim「強敵出現ね」
アカネ『姉さん私の身体を返して』
藍 「アカネでいいのね」
アカネ『うん』
藍 「アカネ もう少し身体を鍛えなさい」
アカネの身体から離れる藍
藍 『こんなガラクタじゃ いざという時になんの役にも立たないわ』
アカネ「姉さんの喋り方が・・・・」
藍 『あなた・・・これからよろしくお願いします』
Lim「詩子いいの? 藍さん トライをモノにしたつもりになってるみたいよ」
詩子 「我慢 我慢 今は我慢よ・・・・・プルプル」
藍 『詩子 冗談です』
詩子 「藍 それ冗談になってない やっぱりセンス悪いわ」
藍 『あはは』
アカネ「姉さんが笑ってる・・・・・」
暗転
〜 現実の虚構 〜
私の部屋 朝:眠っている私(BGM:日々のいとまに)
藍 「あなた 起きてください 朝です 起きてください」
飛び起きる私
私 「わぁ!! それはやめろ! 心臓が止まるかと思った・・・」
藍 「何をやめるのですか?」
私 「”あなた”だ!!」
藍 「あなたはあなたです そう呼んではいけませんか?」
私 「うぅぅぅ、同じような事をアカネに言われたような気がする」
先輩はアカネの先輩だから先輩なんです
モー 「苦労するな・・・・・」
藍 「モーちゃん おはようございます」
モー 「ああ、おはよう」
詩子 「いいじゃない 新婚なんだし」
藍 「まぁ♪」
私 「で、詩子いったい何処から湧いて出た?」
詩子 「ん? 下にアカネもリムさんも来てるよ」
私 「Limの家って商店街の近辺じゃなかったか?
わざわざ戻ってきたのか?」
藍 「朝食の用意は出来てます あ・・・・ごにょごにょ」
私 「もういい 好きにしろ」
藍 「はい♪」
私の家 居間:一同
アカネ「先輩 おはよー」
私 「アカネ、Limおはよう」
Lim「結構いい雰囲気ね」
詩子 「アカネがのたくってた頃とは大違い」
アカネ「ひどぉい! 私はのたっくてなんかない」
詩子 「それにしても モーちゃん あんたも人間の世界で暮らすんなら
その野暮ったい兜ははずすの!」
モー 「そうか」
兜をはずすモーちゃん 息を呑む一同
アカネ「きゃぁ♪」
Lim「なかなかの美形ね」
詩子 「ねぇ 藍 モーちゃんを私に貸さない?
あんたにあいつをあげてから夜が淋しくて・・・・」
藍 「詩子の冗談は下品です」
詩子 「”あなた”よりは可愛いと思うんだけど」
藍 「いけませんか?」
詩子 「あいつを憑り殺すつもりならいいかも
確実に寿命を縮める言葉だもの」
藍 「あなたぁ♪・・・うふふ」
Lim「藍さん・・・それ物凄く怖い・・・」
藍 「冗談です」
詩子 「だから 藍のは冗談になってないってば」
アカネ「姉さんとっても楽しそう・・・・でも」(先輩はそれでいいの?)
私 「そうだな、私は本当の藍の事をよく知らないのかも」
Lim「ねぇ 詩子 詩子は今の藍さんに違和感無いの?
私が聞いてた話と藍さんのイメージが違うんだけど」
詩子 「3年前の藍とは全然違うけど・・・ 10年前の藍はこんな子だったよ
藍の性格に角が立って来たのは、剣道を習い始めた頃だったかなぁ」
藍 「詩子 それを言わないで、思い出したくない
この人の前では・・・今の藍のままでいたい」
詩子 「そう・・・なんだ ごめん」
モー 「お前達 時間はいいのか ・・・・
確か・・・高校とか言うものが あるんじゃないのか?」
Lim「あらあら 大変 みんな遅刻するよ」(ありがと モーちゃん)
通学路:一同(BGM:追想)
Lim「さっきの話の続きなんだけど 藍さんが剣道を習い始めた頃って?」
私 「私と出逢う前 本当の幼馴染君が亡くなった前後の話か」
詩子 「そう・・・藍から人間らしさがどんどん無くなっていく感じがした
でも、藍の根っこは変わって無いよ」
私 「それは判る・・・・・茜を守る事に振り回された藍の人生」
詩子 「藍はそれをやりなおす気で この世界に残ったのかな?」
アカネ「先輩も人生やりなおしたい?」
私 「私の人生は何百回もやりなおして
やっとここまでたどり着いた様なもんかな?」
詩子 「藍ってどのくらい人前に姿を見せていられるの?」
私 「さっきの様子だと30分が限度じゃないかな?」
詩子 「それじゃ学校に通わせるのは無理ね
あんたは放課後 藍を商店街に連れてきて」
私 「詩子 何をする気だ?」
詩子 「何も ただ人並みに遊ぶだけよ」
私 「そうだな 藍には人並みの楽しみを堪能して貰うのが一番か」
アカネ「馬鹿が3匹・・・恋敵に塩送ってどーするの?」
Lim「3匹って事は自分も頭数に入っている訳ね アカネちゃん」
アカネ「もちろん 姉さんにとっては生きてた時に起きた現実が嘘で
これから起きる事が本当の事になればいいな」
詩子 「まいったなぁ・・・これじゃ藍からあんたを取り戻せないじゃない」
Lim「えーっ詩子 諦めないでよ私だって狙ってるんだから」
私 「だから人を物扱いするなと・・・・」
ゲームセンター:一同(BGM:走る!少女たち)
詩子 「リムさん藍をお願い あたしはモーちゃんと」
アカネ「私は先輩担当?」
詩子 「そ、じゃ みんなよろしくね」
Lim「藍 私が勝ったらトライを返して貰うわよ」
藍 「何? どういう事?」
Lim「言った通りよ・・・・私に勝てる?」
藍 「いいわ・・・相手になる」
Limに視線を投げる詩子
詩子 『リムさんうまくやってね 藍といい勝負になるのは
あいつ以外じゃリムさんだけだろうから』
モー 「詩子 これは・・・何をするものだ?」
詩子 「うれしい モーちゃんあたしの名前覚えてくれたのね
えっとね これはね・・・・」
Lim「藍 この台でどぉ?」
藍 「対戦シューティングね いいわ それでルールは?」
Lim「撃墜した敵の分だけ 相手のフィールドに敵が出るわ
で先に自機が無くなった方が負け」
藍 「以外と単純ね」
Lim「手加減するつもりは無いけど フェアじゃない勝負もしたくないから」
藍 「それでも あなたの方が有利ね」
Lim「トライを賭けた以上 負ける勝負はしないわ」
勝負の結果・・・・藍の惨敗
Lim「ふっふっふっ 約束は約束よ」
藍 「うぅぅぅぅぅ」
Lim「トライ勝負よ 藍さんが待ってるんだから はやくはやく!」
藍 「あ・・・・?」
・
・
・
・
Lim「あぅぅ いくら藍さんに時間が無いっても・・・・
ハメ技オンパレードしなくても・・・秒殺されてしまった・・・・」
藍 「あの・・・・リムさん?」
Lim「よし! 藍さん2戦目勝負よ!」
藍 「だから・・・・あの・・・リムさん・・・」
Lim「ん? 藍さん こーゆー勝負した事無いでしょ? 楽しまなくっちゃね」
藍 「勝った方があの人とゲームするの?」
Lim「だから”私が勝ったらトライを返して貰う”って言ったじゃない」
藍 「リムさん 次はこれ」
Lim「パンチボール・・・・」
藍 「あの人を賭けた以上 私も負ける勝負はしないわ」
Lim「パンチボールって・・・女の子2人でやるもの?」
アカネ「もしかして・・・私って先輩の暇つぶし要員?」
私 「へ? アカネと暇つぶしが出来るゲームって何かあったっけ?」
アカネ「ふぇぇぇ 先輩がいぢめたぁ!!」
藍 「あははははは」
アカネ「あ・・・姉さんがまた笑ってる」
詩子 「ねぇ 藍 そろそろ時間じゃない?」
アカネ「詩子 ひどぉい 自分がモーちゃんと遊びたいから
先輩の暇つぶしを私に押しつけたのね」
藍 「あのぉ・・・えーと・・・・」
詩子 「んー・・・モーちゃんって・・・何者なんだろ?」
藍 「えっと・・・時間って?」
アカネ「モーちゃんの事は詩子が一番知ってるでしょ?
身体 乗っ取られちゃてたんだし・・・・・・」
藍 「だからぁ・・・時間って なんですか?」
詩子 「モーちゃんは元々は人間だと思うんだけど なんか・・・違う・・・・」
藍 「詩子!! 時間って何!?」
詩子 「藍? どうしたの?」
藍 「詩子ぉ・・・・時間って・・・何よぉ?」
詩子 「そうそう そろそろ藍が姿を見せてられる限界かなぁ?って」
藍 「そうね・・・・そうよね・・・・私は・・・だから」
詩子 「次はカラオケよ BOXなら人目に付かないから 消えてても平気」
私に話しかける少年(BGM:永遠)
少年 「どうして君はそこまで邂逅を求めるのか」
私 「わくらば(邂逅)が未来を紡ぐからさ」
少年 「時が移ろい易きモノと知りながら」
私 「だからこそ紡がれた時に掛け替えのない文様になる」
少年 「君は・・・・僕よりも・・・」
私 「ただ長く生き過ぎただけの命さ」
少年 「君の求める病葉(わくらば)が望まれない邂逅を起こす」
私 「死者の眠りを妨げるな と 言う事か」
少年 「彼女のあるべき邂逅を閉ざす事が未来じゃない」
私 「もしも生まれ変われると言う事があるのなら・・・・新しい邂逅を」
少年 「それが自然なモノの在り様ではないのかな?」
私 「もしも生まれ変われると言う事が無いのなら?」
少年 「それは君だから・・・」
私 「藍が病葉となる事を望むのなら それでもいい」
少年 「それは自然なモノの在り様に反するから・・・矯正される」
私 「その時は藍を守るさ 誰が相手でも」
Lim「トライ 何やってんの? カラオケ行くよぉ」
少年 「僕は氷上シュン 君とはまた会う事になりそうだ」
私 「覚えておくよ シュン」
暗転
〜 昼行灯 〜
藍とモーちゃんが私の家で暮らすようになって数日
詩子とLimとアカネは藍の為に毎日訪ねて来てくれる
私の家 居間:一同(BGM:潮騒の午後)
Lim「詩子 今日は何処に行くの?」
詩子 「30分一本勝負ってのが 頭痛いのよ・・・・
藍には姿を消して付いてきて貰って・・・
ウインドショッピングを堪能して貰って・・・」
アカネ「ねぇモーちゃんの着てる服って 先輩の服?」
私 「そうだけど」
アカネ「じゃあ今日はモーちゃんの服をみんなで見ない?」
詩子 「最近アカネは普通の女の子してるよね」
Lim「後はクラスでもこの調子だといいんだけど
アカネちゃんは人見知りが激しいから」
アカネ「もう! でもリムさんには言われたくない!
リムさんだって学校じゃ根暗娘じゃない」
詩子 「後はワッフル買って公園で食べるってのはどう?
公園なら藍が姿見せてても平気でしょ」
Lim「詩子 藍さんが姿を見せてると何か問題あるの?」
詩子 「消える所と現れる所を見られなければいいの
公園なら身を隠す場所に困らないでしょ 」
アカネ「だからぁモーちゃんのお買い物ぉ」
私 「モーちゃん断った方がいいよ 連中の玩具にされる」
藍 「そんな事言うものじゃありませんよ あなた」
私 「ほらね」
モー 「鎧の修理がしたい」
私 「だそうですアカネさん いい甲冑を選んであげてね」
アカネ「うぐぐぐぐ・・・・????
あれ? モーちゃんの鎧壊したのは姉さんじゃない なんで私が・・・・」
藍 「アカネ ダメですよちゃんと選んであげないと」
アカネ「だからぁ 姉さんの責任なんだってば!!」
詩子 「・・・あなた・・・・くっ」
唇を噛み締める詩子
藍 「詩子・・・・」
商店街:私とモーちゃん 女子一同はウインドショッピング中(BGM:乙女希望)
歩いてくる茜 茜登場
私 「よっ 茜 こんちわ」
茜 「何をしているんですか?」
私 「茜が通りがかるのを待ち伏せしてしてた」
茜 「っ!!」
後ずさる茜
私 「冗談 詩子達が買い物してるから 暇潰しをね」
茜 「詩子とリムさんとアカネちゃんですか?」
私 「そう」
茜 「また 私を1人にするんですね」
私 「それ 茜の被害妄想だよ」
茜 「そうですか?・・・・でもあなただって!・・・・
あ・・・・ごめんなさい・・・」
私 「茜・・・疲れてない?」
茜 「そうですね・・・そうなのかも知れませんね」
私の隣に居るモーちゃんに視線を投げる茜
茜 「その方はどなたですか?」
私 「こいつはモー 2,3日前からウチに泊まり込んでる こっちが幼馴染の茜」
モー 「モーです よろしく」
茜 「里村茜です 毛さん? あの・・・中国の方ですか?」
私 「モーちゃんって日本製だよね?」
モー 「はい 日本で産まれました」
茜 「この人とは何処で? 何時?」
私 「茜? 何故そんな詮索を?」
茜 「あ・・・私・・・ごめんなさい
やっぱり・・・・疲れてるみたい・・・」
詩子 「あっかねぇ!」
商店街を歩いてくる一同:一同登場
アカネ「姉さん 鎧はこの辺には売って無いの!!」
藍 「困ったわ 大袖は右も左もボロボロ
胸には大きな穴・・・・小さな部品も千切っちゃったし・・・・はぁ・・・」
茜 「アカネちゃんのお姉さん? ・・・・お姉ちゃん・・・」
藍 「茜・・・・」
茜 「アカネちゃんのお姉さんですか?」
藍 「茜さんですね アカネの双子の姉の藍です」
茜 「藍姉ちゃん・・・・」
藍 「はい」
私 「なぁ詩子 予定じゃまだ藍は姿を見せないんじゃ?」
詩子 「藍がモーちゃんの鎧を買うって聞かなくて・・・・
アカネとオモチャ屋をまわって・・・・・」
私 「もしかして・・・・五月人形?」
詩子 「うん」
私 「季節だからなぁ・・・・でも藍なら実用に耐えるモノかは判るでしょ?」
詩子 「だから・・・ああやってアカネに愚痴こぼしてるの・・・」
私 「でも茜と藍を会わせるのはまだマズイんじゃないのかな?」
アカネ「姉さんまだ長い間姿見せてられないし・・・・」
詩子 「でも、この辺はアカネの時に経験済みなんでしょ 何とかなるよ」
藍 「茜さん 御家族は健在ですか?」
茜 「・・・・父も母も元気ですが どうしてそんな事を聞くんですか?」
詩子 「茜 あたしも聞かれたよ・・・”家族は元気か?”って」
Lim「私も聞かれた・・・・変わった趣味よね」
藍 「茜さん お兄様か弟さんが居ません? お父様の年収は?」
茜 「藍さん・・・・あなたは!」
藍 「冗談です」(父さんも母さんも元気・・・・)
詩子 「だから 藍のは冗談になってないってば」
・
・
・
・
藍 「・・・・詩子 私は先に帰るわ」
私 「藍 あんまり無理するなよ」
藍 「あなたも気を付けてください」
藍退場(BGM:雨)
詩子 『・・・・あなた・・・・あな・・た・・・』
Lim「茜 これからみんなで公園行くんだけど 茜も行かない?」
茜 「みんなで・・・・茜も・・・・私は・・・・みんなの中に入ってないんですね」
Lim「私 そんなつもりじゃなくて・・・・」
詩子 「あ・・・茜・・・ごめん あたし藍の事ばっかり気になって」
私 「茜 どこか静かな所に行こうか? アカネ 詩子とLimを頼む」
茜 「いいんですか? みんなと約束してたんじゃないんですか?」
私 「茜 ”みんな” やっぱり疲れてるよ茜は」
アカネ「詩子さん リムさん 公園に行くよ」
私と茜 アカネと詩子、Limに別れて退場
モー 「藍 奴も苦労するな・・・」
藍 『あの人は優しすぎるのね』
モー 「そうだな だがそれが奴の力か」
藍 『それが魅力ね』
モー 「俺達も公園に行くか・・・・場所は判るか?」
藍 『場所が判らないなら アカネに付いて行けばよかったのに」
モー 「そうだな・・・・」
藍 『ここにも苦労人が1人』
藍とモー退場
喫茶ぬくれおちど:私と茜(BGM:海鳴り)
私 「茜 腹に溜め込んでるモノ吐き出してしまおうよ」
茜 「いきなりですね」
私 「いきなりだ」
茜 「でも・・・あなたらしいですね」
・
・
・
茜 「最近 私はみんなから避けられてる気がします」
私 「詩子とLimとアカネがつるむのは仕方ないか・・・
アカネは詩子の家に居候してるし、人見知りが酷くて
学校じゃLimにべったりだし・・・・」
茜 「あなただって! 私を・・・・避けています・・・」
私 「今も避けてる?」
茜 「誤魔化さないでください・・・・私に隠し事していませんか?」
私 「当たり・・・・隠し事はあるよ」
茜 「話してくれませんか?」
私 「ダメだな」
茜 「あなたも私を独りにするんですね」
私 「茜 オマエは私に話せない事は無いかい?」
茜 「あなたに話せない事・・・・あります・・・・」
私 「それが普通だよ」
茜 「普通ですか?」
私 「誰にだって 誰にも話せない事の一つや二つ・・・・
特定の誰かに話せない事の一つや二つはあるよ」
茜 「それは・・・私だけが知らない事・・・に・・・なるんですね」
私 「そうだね でもね茜 そうだとして
例えば今日 詩子とLimは茜に冷たく当たったのかな?
茜を傷つけたのを知って落ち込んでたんじゃ無かったのかな?」
茜 「何が言いたいのですか?」
私 「茜に隠し事はしてる でも悪意を持ってやってはいない それだけは判って欲しい」
茜 「・・・・慰めてくれるのなら もっと上手に慰めてください」
私 「粗野で悪かったな」
茜 「ほんとに・・・そうですね」
・
・
・
茜 「みんなの所に行ってください 約束していたんですよね?」
私 「今日はいいよ 今更行ったって冷やかされるのがオチだ
茜に時間があるのなら付き合うよ」
茜 「奢ってくれますか?」
私 「何なりと・・・」
茜 「でしたら・・・・・」
暗転
公園:一同(BGM:遠いまなざし)
Lim「里村さんを傷つけちゃった・・・・」
アカネ「先輩が何とかしてくれるよ」
藍 『茜はあんな子じゃなかったのに』
詩子 「藍 帰ったんじゃなかったんだ・・・
藍が死んでから・・・・茜の笑顔見てない気がする」
アカネ「茜の事は・・・・先輩を信じようよ
しんみりしてないでワッフル食べよ」
詩子 「そうね・・・藍 姿出せる?」
・
・
・
詩子 「藍?」
少し離れた茂みの影から藍登場
詩子 「・・・・・」
藍 「どうしたの? 詩子」
詩子 「昔の藍はこんなに食い意地張ってたかなぁ? って思って」
藍 「ワッフルは3年くらい口にしていませんから」
詩子 「・・・・藍・・・ワッフルを買い食いする幽霊がいたら怖いわ」
藍 「冗談です」
詩子 「まったく・・・藍 はいシナモンとストレートティ」
アカネ「それ・・・詩子の好みじゃ?」
詩子 「あたし 藍の事忘れてたけど これだけは覚えてたみたいね
こんな大人びた物が好きな生意気だった女の子の事」
藍 「私がねだったの・・・一二度しかなかったのに覚えていて・・・・」
詩子 「子供は子供らしく・・・・そう躾けられていたものね 藍と茜は」
アカネ「女の子は女の子らしく・・・・だから姉さんが剣道始めた時は」
Lim「アカネちゃんその話題は止めよ」
詩子 「ヤメヤメ 藍を見てるとあいつの事思い出しちゃってダメね」
アカネ「詩子 最近 お・か・し・い もんね」
藍 「昼間からボーっとしてたり、ブツブツ独り言言ったり・・・」
Lim「藍さん あなたが?」
詩子の両肩に手を置く藍
藍 「詩子・・・・眠って」
力無くベンチに崩れる詩子
Lim「でも・・・どうして?」
藍 「詩子には忘れていて欲しかったから 思い出して欲しくなかったから」
Lim「忘れていて欲しかった?」
ベンチに座って膝の上に詩子の頭を乗せる藍
藍 「今の詩子を見れば判るでしょ 死んだ人間の事なんか気にしなくていいのに」
アカネ「姉さんそれは違う」
藍 「アカネ 生きている人間の方が大事よ」
Lim「トライが普通の人だったらね
トライは藍さんやアカネちゃんも大切に出来る人だから・・・・
私や詩子には普通の人を探すって選択肢もあるから・・・・」
藍 「リムさんあなただってあの人の事が好きでしょ?」
Lim「だけど友達も大事・・・友にしてライバル もちろん藍さんもね」
藍 「リムさんとは生きている時に会いたかった」
Lim「3年前・・・周りの人間の顔色だけ見て生きてた頃の私か
あの頃の私を藍さんには会わせたくないなぁ」
アカネ「姉さん 詩子をどうするの?」
藍 「詩子は意地張って無理ばかりするから・・・・神経すり減らして」
詩子に囁く藍
藍 「詩子・・・詩子はあの人の事が好きよね・・・・
詩子はあの人を誰にも取られたく無いよね・・・
あの人は詩子のものよね・・・・・」
詩子の髪を撫でながら暗示を続ける藍
藍 「詩子からあの人を取り上げようとする人がいたら哀しいよね
詩子はあの人を取り上げる人をどうしたい?」
詩子 「・・・・ゆ・・・・」
藍 「詩子の大切な人がいなくなるの・・・・どうしたい?」
詩子 「・・・ゆるさない・・・・」
藍 「そうよ 許しちゃだめ あの人は詩子の大切な大切な人」
詩子 「・・・あいつは・・・・大切な・・・人・・・」
藍 「そうよ 詩子はいい子ね」
Lim「藍さんはそれでいいの?」
藍 「私の暗示なんて・・・・私にもっと力があったら
詩子が私を思い出す事なんて無かったのに
今私が詩子に出来る事なんてこれぐらい・・・」
アカネ「姉さん その・・・・私達が先輩に手を出しても
詩子は許してくれないの?」
藍 「アカネ 試してみます?」
Lim「藍さん お願い私も気になるから」
詩子に囁く藍
藍 「詩子・・・・起きて」
詩子 「・・・・うん・・・?・・・・あれ?
なんか・・・暖かい・・・」
藍の太股を弄る詩子
藍 「ちょっと・・・詩子やめて」
詩子 「・・・あれ?・・・藍・・・ここどこ????」
Lim「ここは公園 詩子は藍さんの膝枕でお昼寝の真っ最中」
詩子 「公園? 膝枕??? ・・・・・わぁ!!」
藍の膝枕から飛び起きる詩子
アカネ「詩子 おはよー」
詩子 「あたし 寝てたの? あれ? ???」
アカネ「ねぇ詩子 もしも私が先輩と付き合ったら 詩子は私の事どう思う?」
詩子 「許さないわよ ・・・・でも なんでそんな事聞くの?
立場が逆だったら アカネだってあたしを許さないでしょ?」
Lim「やっぱりこういう事なのね 藍さん」
藍 「私の暗示なんてこんなモノ ねぇ詩子 だったら私の事許せないよね?」
詩子 「あ・・・うん・・・でも・・・・」
藍 「詩子がそう思いたいのなら 私もアカネやリムさんと同じ
ただの恋敵よ 昔の事なんて気にしなくていいの
あの人を詩子から取り上げた私の事許せないでしょ それでいいの」
詩子 「・・・・藍・・・あたしに何か した?」
藍 「ちょっとね」
詩子 「藍に心配かけるぐらい あたしって酷かった?」
藍 「かなりね」
アカネ「馬鹿が4匹・・・・」
Lim「藍さん 幽霊には向いてないよ」
詩子 「マヌケの象徴 ”真昼の幽霊”だし」
モー 「友にして・・・・宿敵・・・・か・・・」
暗転
〜 古の牙 〜
商店街:私と茜 二人の背後にシュン
(BGM:虹をみた小径)
私 「結構散財したなぁ」
茜 「知りません・・・あなたがあんなに不器用だなんて」
私 「ふふふ 私の専門は破壊工作だ 生産行為は茜に任せた」
茜 「ギャンブルは生産行為とは言いません」
私 「あれ? 人はあぶく銭を掴むために賭をするんじゃ?」
茜 「知りません」
私 「でもなぁゲーセンに行きたがったのは茜だよ
茜が楽しめそうなのって・・・あれぐらいしか」
茜 「私は・・・あなたと一緒に居られればよかったんです」
私 「行った以上は楽しむ・・・ビデオゲームは論外だし
運動系もね ルールが簡単で始めてでも楽しめるのって言ったら」
茜 「競馬は無いと思います」
私 「基本的に選んで賭けるだけだから・・・・」
茜 「競馬の後はルーレット・・・・」
私 「ゲーセンの設備だから気にしない 本当の賭博じゃないんだし」
茜 「気にします 私に似合ってるゲームがギャンブルなんですか?」
私 「いい女にはよく似合うと思うよ」
茜 「知りません」
背後のシュンの様子を伺う私
私 「茜 先に帰ってくれ どうも後ろから付いてくる奴が居る」
茜 「知り合いですか?」
私 「まぁ・・・全く知らないわけでも無いけど・・・」
茜 「声をかけてはどうですか?」
私 「向こうも理由があるから尾行てきてるんだろうし
例えば私か茜が1人になるのを待ってるとか・・・
茜が先に帰って・・・茜の後を追うようなら奴の足を止める」
茜 「わかりました でも無理はしないでください」
茜退場
(BGM:偽りのテンペスト)
シュン「君も隅に置けませんね また違う子ですか?」
私 「藍の事を知っていて茜を知らない筈はあるまい?」
シュン「里村藍 秩序乱す者として矯正される いずれ近い内に」
私 「いいねえ その情報・・・矯正されるべきは藍ではなく
藍を誘う元凶 藍はその元凶を釣る為のエサ」
シュン「それを知って なお 楽しむと言う君の魔性」
私 「誉め言葉だと受け止めておくよ」
シュン「その危うさ 彼女達の行くべき道を歪め・・・・」
私 「”行くべき道”など無い 道とは自ら切り開く物だ」
シュン「君は彼女達に道を示せない 君が示せるのはただ1人
君が選ばなかった彼女達に君は自ら道を開けと突き放す」
私 「病葉となり道を示すなら」
シュン「君に彼女達の祝福された未来を奪う権利は無い」
私 「私ではなく それを選ぶのは彼女達だ」
シュン「君の魔性に誘われた彼女達の末路に救いを」
私 「予定調和に安住を求める事 自らの可能性を追求する事も無く」
シュン「彼女達に安息の日々を」
私 「自らに枷をはめる事無く足掻け 生き続ける限り より高みを目指して」
シュン「君の行く道に幸あれ」
私 「誰が為の幸福 誰が為の愛 誰が為の正義」
シュン「君は人間として生きて行くんだね」
私 「生きてってのは・・・・死ねない身としては抵抗があるよ」
シュン「独りで生き続けて未来を紡いで 過ぎゆく者を見届けて なお人として」
私 「シュン それが私だから」
シュン「永遠は・・・・ここにある ここが君の永遠」
私 「逃れる術が無い以上 乗り越えるしかない」
シュン「僕は・・・僕の道を・・・・ 里村藍の事は君に伝えたから」
私 「藍は必ず守る 藍の人生がもう終わったなんて誰にも言わせない」
シュン「僕は病院に戻るよ」
私 「シュン?」
シュン「これでも僕は重病人なんだ 君を見ていたら・・・・
少し人間らしく生きてみたくなった
そう・・・あそこは人が救いを求める場所」
窓より差し込む夕日 ベットの上に座っている茜(BGM:永遠)
モノローグ:茜
商店街であの人と別れてから・・・・何か目の前に降りてきて
ここは・・・何処? 夕焼け・・・赤い・・・空
茜の瞳に泪 夕焼けは夕闇へと代わり
暗いままの部屋に身じろぎ一つしない茜の影が伸びる
あの人・・・・あの人って・・・誰? 誰だった? あの人って
私の家:私とモー
モー 「藍・・・・遅いな・・・・」
私 「・・・・しくじったかな?」
モー 「藍が・・・帰ってこない理由・・・何を知ってる?」
私 「何も・・・ただ藍が狙われるから気をつけろと忠告された」
モー 「どうする?」
私 「もう少し待つさ ただの思い過ごしかも知れない」
モノローグ:茜
あの人の・・・・
・・・顔が、声が、思い出せなくなる…
私・・・・私は・・・誰?
部屋に明かりが灯る 部屋の入り口の横
蛍光灯のスイッチに指をかけている藍
藍 「茜 あなたには見られたくなかった・・・」
茜 「・・・・誰も・・・・いなかった・・・のに・・・」
藍 「茜 しっかりして」
茜 「茜? ・・・・私は・・・・茜・・・
誰?・・・・・あなたは・・・・誰?」
藍 「私は・・・幽霊・・・昔・・・ここで死んだ子の・・・・」
茜 「そう・・・・お姉ちゃん・・・私・・・眠い」
藍 「茜!・・・・あか・・・ね・・・」
茜を支える藍
藍 「・・・この部屋で・・・このベットで・・・私が・・・死んだ」
茜 「・・・眠いよ」
藍 「少し我慢して・・・ 茜と話していたい」
茜 「お姉ちゃん・・・酷いよ・・・私・・・眠いのに」
藍 「あの人に・・・最期まで・・・みていて欲しかった」
私はアイツを看取るのをやめた、アイツは最後まで勝気な姉の仮面を被り続けるだろう
茜 「あの人って・・・誰?」
藍 「わがままで・・・嘘つきで・・・自分勝手で・・・子供ぽくって・・・
人の気持ちなんて何も考えなくて・・・それなのに・・・どうして・・・」
茜 「お姉ちゃんその人が好きなんだ・・・私も好きな人・・・いるんだよ
その人・・・その人は・・・・あれ? 誰だっ・・・け・・・?」
藍の腕の中から消える茜
藍 「茜? 茜・・・・あかね・・・・あかねぇ!!」
私は・・・あの人に・・・最期まで・・・みていて欲しかった
でも・・・あの人は看取ってくれなかった・・・だから・・・
だから・・・私の未練は・・・この世界に 残って居られたんだと思う・・・
藍 「茜を返せ!!」
ドアに体当たりをする藍 合板製の薄っぺらい筈のドアが藍の身体を弾き返す
藍 「畜生!」
辺りを見回す藍 ベッドのサイドテーブルの支柱を力任せにむしり取る
支柱を中段に構え 前傾で重心移動を行いながらドアへ一突き
鈍い音と共にドアに拳大の穴が空く 穴が空いている筈のドアに付き当たった支柱が折れ曲がる
藍 「くっ!」
藍は支柱を窓に投げつける 砕け散る窓ガラス しかし支柱は部屋の中に跳ね返る
あたかもそこに目に見えない壁があるかの様に・・・・・
藍 「畜生 畜生 畜生!!」
私の家:私とモー
私 「決まりだな・・・・」
モー 「藍は敵の手に落ちたか」
私 「楽しい事をしてくれる」
モー 「武器はどうする?」
私 「通常兵器が通用する相手じゃないさ なら身軽な方がいい」
モー 「場所は?」
私 「病院・・・信心の無い人間でさえ 天に祈りを捧ぐ場所」
木刀を手にする私 すぐに木刀をその場に置く
私 「大した武装が出来ないなら いっそ丸腰の方がいいか」
病院 待合室:シュン(BGM:A Tair)
私とモー登場
私 「シュン 来たよ」
シュン「君なら来ると思っていたよ」
モー 「奴は?」
私 「敵だ・・・・」
モー 「そうか」
日本刀を抜くモー
私 「モーちゃん 敵意の無い奴を相手にする程暇じゃないよ」
モー 「そうでも・・・無い・・・ひとつ・・・ふたつ・・・・」
シュン「高位の者も居る」
私 「静かな病院だ・・・・」
シュン「病院は元来静かなものだよ ここで騒ぎを起こそうとするなんて」
私 「それで・・・今は無人と言うわけか」
シュン「里村藍は君のよく知ってる病室にいる」
モー 「ここは俺に任せろ お前は藍の所に行け」
待合室の中に斬り込むモー モーの剣気が何かにぶつかる
私 「総数 38匹 ・・・・ 茜もここに居るのか
茜にも手を出すとは思わなかったな」
何かが私に襲いかかる その攻撃は私に届かずに弾かれる
私 「私に関わると不幸になるよ」
モー 「俺の時は 手を抜いたのか?」
私 「モーちゃんにそう言われるのは哀しいな
私に向けられた悪意は弾き返せてもね 純粋な勝負はそうはいかない」
シュン「他人に悪意を向ける者は 自らの悪意で滅ぶ・・・か」
モー 「怖い奴だ」
そう言いながらモーはまた一体を斬り捨てる
私 「オマエ達の正義を見せてみろ それが悪意で無いと言うのなら
私なんかに負けはしないだろ?」
4、5体が私に攻撃を仕掛ける
『御使いさんが多勢に無勢なんて』
『そんな卑怯な事しちゃダメだよ』
『正義の前には悪党の命なんて虫けら同然なのね』
『ほんと・・・誰の為の正義なんだか・・・』
私達が攻撃を阻む
モー 「俺は とんでもない奴に喧嘩を売ったのか・・・・」
私 「モーちゃんは藍の所へ行って 今の藍ならモーちゃんを使いこなせる
人を殺す為じゃなくて人を活かす為にモーちゃんを使える」
モー 「ふふふ 判っていたのか」
私 「モーちゃんの正体は最初に見てるからね 剣精 剣霊 剣妖 そんなもんだろ?」
モー 「刃精(じんしょう)・・・・・そう呼んでくれ」
『おしゃべりしてないで手伝ってよ』
『連中数が多いんだからさぁ』
『人使いが荒いよぉ 我ながら』
私 「ここは私が押さえる モーちゃん 囮が囮と悟られても
無視できないだけの戦力を持っていれば
継続して敵を引きつけておける もしも囮に背を向ければ挟撃される」
モー 「藍の所へ行ってくる」
私 「それと茜の事も頼む 茜の側に一匹でかい奴が居る」
シュン「君を敵にまわした愚か者達の宴がはじまる」
〜 破壊神降臨 〜
藍の病室:うなだれている藍(BGM無し SEも無し 無音でよろしく)
藍 「畜生・・・・いったい茜が何をした!?
あの子はただ普通に生きてきただけじゃないか!!」
ズタズタに荒らされた室内・・・
御使い「藍 君はここに帰る そして君はここからはじまる」
藍 「茜を連れて行かれて 大人しく出来るかぁ!!」
茜の手刀が空を斬る
御使い「無駄だと知りながら何故抗う?」
藍 「目の前に・・・・あんたがいるから!」
御使いに飛びかかる藍
御使い「愚かな・・・」
御使いの腕の一振りに投げ飛ばされドアに叩き付けられる藍
ドアに空いた穴から部屋の中に手が伸びる
モー 「そうやって女性を追いつめるのは・・・関心しないな
藍・・・武器なら有る 俺の手を取れ」
藍 「モーちゃん?」
言われるままにドアの穴から伸びたモーちゃんの手を取る
だが藍の手に収まっていたのは一振りの刃
藍 「モーちゃん・・・・」
大きく息を吸い込んで目を閉じ 御使いに向きなおす藍
目を閉じたまま横一閃 切り裂かれる御使い
ガタン・・・病室のドアが音を立てて倒れる
藍 「壁が・・・・消えた」
部屋から廊下へ出る藍
藍 「モーちゃん・・・あなたの本当の名前は?」
モー 「名は無い・・・・だが銘なら有る」
藍 「あなたの銘は?」
モー 「・・・・村正」
藍 「ねぇ モーちゃん茜の居るところ知らない?」
モー 「この建物の 一番上に居る」
藍 「ありがとう それじゃ行くよモーちゃん
あなたは私達のモーちゃん 妖刀なんかじゃない」
駆け出す藍(BGM:哀戦士)ベタベタだぁ
御使いを斬り捨てながら廊下を駆け抜ける藍
藍 『私・・・何をやっているのだろう? 茜を守る為に剣を振るって
昔と同じ・・・何も変わらない・・・もう一度あの人に逢えたのに・・・・』
御使い「そうやって 君はまた罪を・・・・」
藍 「おしゃべりな男は嫌いよ」
藍に切り裂かれ霧散する御使い
藍 「今は茜を助け出すことだけ・・・・」
待合室:私とシュン 御使い一同
(BGM:荒野の果てに)
闇切り裂く 天の刃に 足もとどめず 男は歩いた *
明日は誰かに逢える 望みもないが 何かをもとめて *
時は虚しく流れ 愛する人も悲しみも 遠く過ぎる *
『囲まれちゃったね』
『困ったね・・・・』
『どうするつもりかな?』
『武器も持ってきて無いのに』
『でも20匹は集まってきたね』
『やっぱり武器持って無いからかな?』
『御使いさんも結構 現金ね』
待合室の中央に私 私を取り囲むように御使い達
私は右手を掲げる
私 「愛は光 すべてを切り裂く激情の刃
優しさは闇 すべてを飲込む底無しの檻
人の魂の底に眠る砕かれし夢のかけら
その無念我が元に集いて形となれ」
私の右手の中に木刀・・・木刀は長巻へ姿を変える
(長巻 ナギナタの刃の部分が日本刀になってる武器を想像してください
あるいはナギナタ並の長い柄の付いた野太刀)
『少し呪文が変わったね』
『一段と物騒な武器だね』
『破滅の力が木刀じゃなくて』
『武器の形してるって事は・・・・』
『使いこなせるって事?』
『クワバラ クワバラ』
長巻の柄に左手を添えて頭上で弧を描く様に振り正面の御使いに打ち付ける
周囲にいた4,5体の御使いが巻き込まれて霧散する
それを合図に御使い達が一斉に飛びかかる
右手を支点に長巻の柄による打撃 身体の後ろに向いた刃を後方へ突き出す
背後から襲おうとした御使いが串刺しにされる
右手首を返して 御使いを串刺しにしたままの逆袈裟 袈裟懸け 横一文字
一連の剣舞に半数の御使いが霧散する
空気に冷たいモノが混じる
『怒ってるよね?』
『怒ってる 怒ってる』
『連中 茜と藍を虐めたから』
私 「見ていないで勝負をしたら?」
私は肩越しに背後のリーダー格の御使いに視線を投げる
光弾を放つ御使い 呪いの鏡に跳ね返された光弾が御使いを襲う
私 「間接攻撃は無効 私を倒したくば直接斬り込んで来い」
バスタード・ソードを抜く御使い 顔の横で長巻の刃を上にして構える私
長巻の下を潜って踏み込んでくる御使い 長巻の柄が半回転して御使いの顔面を捉える
更に右のミドルキックが追い打ちをかける
シュン「天使を足蹴にした人間なんて初めて見た」
長巻の柄尻に右手 刃の根本に左手 通常とは逆の握りをする
御使いの起き上がりに長巻による槍撃を重ねる 胸を突かれて霧散する御使い
私 「残り数匹」
身近な御使いから斬り付けていく私
階段を駆け上がる藍(BGM:哀戦士)
藍の進路を妨害する御使いがモーちゃんに切り裂かれる
藍は階段を上りきり屋上へ
屋上:御使い(ラスボス)と茜
屋上のドアを開ける藍
藍 「よかった・・・・間に合った」
御使い「少女よ 何故闘う?」
藍 「あんた達ってそういう物言いしか出来ないの?
私には守るべき人が居る そして・・・・
目の前にその人を脅かす敵が居る」
正面から斬り込む藍 腕を振り下ろす御使い 地を這う風が藍を襲う
サイドステップを踏む藍の軌道が弧を描く 左足を引き両腕を広げて
スピンする藍 モーちゃんの切っ先が御使いをかすめる
御使いは身体を引いて藍の斬撃をかわす
藍は御使いの回避運動に呼応して踏み込み 右逆袈裟を放つ
藍の斬撃は御使いの前で見えない壁に阻まれる
壁に弾き飛ばされる藍
藍 「くっ!!」
藍は着地と同時に突きを放つ その突きも壁に阻まれ御使いの手前で止まる
そんな藍の様子を光の失せた瞳で見つめる茜
御使いは両腕を振り下ろす 交差する風が藍を捉える
しかし風はそれぞれが二つに別れて藍の身体をすり抜ける
モー 「お前はその腕で・・・・どれだけの人の血を吸った?
俺が吸った人の血は 俺を呪う もっと苦しめ・・・・と
楽に死なせはしない・・・・と」
御使い「亡者め 何故少女を惑わす 修羅の道へ」
モー 「邪に遭えば邪を斬り 聖に遭えば聖を斬る
それ人が人として生きる道 聖にも邪にも媚びを売ることなく」
愛は光 すべてを切り裂く激情の刃
優しさは闇 すべてを飲込む底無しの檻
藍 「あの人の声・・・・」
人の魂の底に眠る砕かれし夢のかけら
その無念我が元に集いて形となれ
藍 「!っ」
モー 「藍 どうした?」
藍 「砕かれし夢のかけら 我が元に集いて 形となれ・・・・・
私も・・・アカネも・・・モーちゃんも
みんな あの人が呼んでくれたんだ・・・・」
モー 「そうだな」
藍 「モーちゃん私に力を貸して」
モー 「何を今更 牙は使い手と共にある 最初から俺はお前の力だ」
藍の小足払い ミドルキック サイドステップで裏を取っての手刀
藍の攻撃はことごとく壁に阻まれる
シュン「茜さんこちらへ」
不意に姿をあらわしたシュンが茜を屋上の隅へ誘導する
御使い「氷上シュン 何の真似だ?」
シュン「この子が居ては邪魔だと思いまして
それと彼は階下で院内の天使を掃討しています
早急に里村藍を改心させないと彼がここまで来ます」
御使い「奴など恐るるに足りん」
シュン「なら・・・いいのですが」
藍のラッシュは続く 藍の裏拳が御使いの頬を捉える
間髪入れず藍の蹴りが御使いの脇腹から鳩尾へと貫く
シュン「ほぅ 天使を足蹴にした人間が二人」
藍 「やっぱりね」
モー 「なるほど・・・・」
藍 「私の方があいつより速い」
起き上がる御使い
御使い「私の膝を地に付かせる人間が居たとは・・・・
里村藍・・・お前に闘いを強いるのは誰だ?」
藍 「!」
御使い「何故お前は茜を守ろうとする 誰がそれを強いる
それを強いられたお前はどうなった? 」
藍 「私は・・・死んだ」
御使い「茜の魂は今安息の中に有る お前も茜の所へ行け
同じ過ちを繰り返す事は無い 安息はここにある」
藍 「同じ過ち・・・・」
シュン「もしもその機会が与えられたなら
誰に強いられる事も無く、自らの意志で妹を守る事
その未練を果たす機会が与えられたなら
人はその時何をするのだろう? 何を望むのだろう?」
御使い「氷上シュン 所詮お前も人間か・・・残念だ」
御使いの光弾がシュンめがけて放たれる 光弾はシュンの身体をすり抜ける
シュン「今更 惜しい命じゃないさ それに
世界から消えると言うのはこういう事
現実の辛い事 苦しい事 嬉しい事 楽しい事
すべてが僕からすり抜ける・・・・・」
消えかけたシュンの身体がハッキリと現れる
シュン「藍 茜を守ろう 藍の心の赴くがままに」
藍 「私は・・・・私が茜を守りたいから闘う」
荒野を走る 死神の列 黒く歪んで真っ赤に燃える *
死に逝く男達は 守るべき女達に *
死に逝く女達は 愛する男達へ *
何を賭けるのか 何を残すのか *
I pray pary to bring *
near the NewDay *
助走を付けて御使いに飛び込む藍 藍のフライングヤクザキック
壁に阻まれたヤクザキックを足場に見えない壁を一気に駆け上がる
藍 「モーちゃん 行くよ」
上空からの落下速度を重ねた藍の縦一文字 見えない壁が軋む
刃を打ち下ろした姿勢で着地する藍
藍の縦一文字を凌いだ御使いの緊張が緩む
・・・着地姿勢からの藍の逆袈裟が御使いを切り裂く
御使い「なん・・・だと・・・」
藍 「反応が遅いのよ・・・身体を鍛えてないから」
風に吹かれてキラキラと舞い散る御使い
一際強い風が吹き光の粒は天空へと舞い上がる
モー 「終わったな・・・・」
人の姿に戻るモーちゃん
藍 「モーちゃんありがとう モーちゃんが居なかったら私・・・・」
モー 「さてさて 藍が居なかったら 俺はどうなってたんだろうな?」
シュン「僕は病室に帰るよ」
藍 「氷上シュン・・・でしたよね?」
シュン「ああ天使様にそう呼ばれていたからだね
僕は氷上シュン・・・・この病院の入院患者さ
重病人に長話は止めても貰えるかな?」
藍 「ありがとう」
シュン「こちらこそ 僕も最後まで人として生きてみたくなった」
シュン退場
藍 「茜は?」
光の失せた瞳でこちらを見つめている茜
*出典:「必殺仕掛人」より 「荒野の果てに」 及び
「劇場版機動戦士ガンダム 哀戦士編」より 「哀戦士」
〜 病葉(わくらば) 〜
病院の屋上:藍とモー 茜(BGM:遠いまなざし)
私登場
私 「藍 モーちゃん 終わった?」
藍 「茜が帰って来ない・・・・」
光の無い瞳で佇んでいる茜・・・茜の前でチラチラと手を振る私
私 「なるほど・・・・・」
茜の頭を小突いて見る
茜 「痛・・・・・」
私 「一応反応は有るね・・・・じゃぁ」
ゴッ! 茜の脳天を殴りつける
茜 「痛い・・・・・目がチカチカする・・・・」
藍 「茜 大丈夫?」
茜 「藍さん? あの・・・ここは何処ですか?」
私 「病院の屋上」
茜 「南さん 私どうしたんですか?」
私 「商店街で倒れた茜を 病院に担ぎ込んだのはいいんだけど
今日は病院の定休日みたいで誰もいないんだ」
茜 「病院に・・・・定休日ですか?」
私 「医療も商売だからねぇ 少しでも空気のいい所と思って
屋上に来たんだけど・・・・」
茜 「面白い人・・・・」
藍 「これってどういう事? 茜はどうなっちゃったの?」
私 「御使いの連中が都合のいい様に茜の記憶をいじったってとこかな?」
藍 「私もああなってたって事?」
私 「幽霊の藍は消される予定でしょ」
藍 「だったら消された方が良かったな・・・・結局 私は茜を守れなかった」
私 「茜も藍もモーちゃんも無事 中々の成果だよ」
藍 「南さん・・・それでいいの?」
私 「最初は藍だって私をそう呼んでたじゃないか
またココからはじめればいい それだけさ」
藍 「違うわ最初は南君だったはずよ」
私 「なんか、懐かしいなそう呼ばれるのって」
藍 「はぁ・・・・確かにどうでもいいのかも 過去の事なんて」
私 「そうそう病葉は若葉にその座を譲るものさ」
藍 「病葉ってそう言う意味の言葉だったかしら? あ・な・た」
私 「あなた・・・そう呼ばれるのは慣れないなぁ・・・・」
茜 「あの それで 南さん 私は?」
私 「で、病院に誰も居ないから 茜が気が付いたら帰ろうって話になって
茜の目が覚めるのをみんなで待ってたんだ」
藍 「物凄く苦しい嘘ね それにこんな荒療治して茜に後遺症は出ないの?」
私 「その時はその時さ 今はみんなが無事なのが嬉しい」
茜 「屋上で・・・ですか???」
モー 「・・・常識を知らん奴だ・・・・正直に言ったらどうだ」
藍 「倒れた里村さんの事を口実に 病院に忍び込んで大騒ぎしてたって」
モー 「ガラスは割るは・・・ドアは叩き壊すは・・・」
藍 「挙句にカギをこじ開けて屋上で大暴れするは・・・・
私とモーちゃんが止めなかったらどうなってた事か・・・・」
モー 「まったくだ」
藍の後ろに隠れる茜
茜 「南さんがそんな人だったなんて・・・・」
藍 「あなたも見つかる前に帰るわよ
こんな事に里村さんを巻き込むんじゃないの」
私 「ふぇぇぇ 悪者にされてしまった・・・・・」
藍 「あら あなたには一番似合ってるわ」
一同退場
『どうする?』
『どうするって 今の茜は』
『そうだよね 今の茜連れて行っても・・・・』
『また待つしか無いのかな?』
『幸せな茜を手に入れるまで・・・・』
雨の空き地:茜
光の失せた瞳で独り言を繰り返す茜
モノローグ:茜(BGM:雨)
…待ってるんです 私の幼なじみ
…この場所で別れた幼なじみを待ってるんです
ここが最後にその人と別れた場所だから
私が好きだった人だから…
だから、私はこの場所で待ち続ける…
…待ってるんです 私の幼なじみ
…この場所で別れた幼なじみを待ってるんです
ここが最後にその人と別れた場所だから
私が好きだった人だから…
だから、私はこの場所で待ち続ける…
…待ってるんです 私の幼なじみ
…この場所で別れた幼なじみを待ってるんです
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…待ってるんです 私の幼なじみ
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…待ってるんです
ONE本編 茜シナリオへ 終幕
ラストは詩子シナリオと同じなんだけど・・・もっとシンプルに
(茜は借り物のキャラだからなぁ・・・・全体的に出番の無い茜・・・茜のサイドストーリーなのに)
「私」はある意味 悪魔です・・・・地獄の鬼って言った方が正確かな?
(たぶんにアジアンテイストだけど)
天上の神格を持つ者を敵にする「時の囲われモノ」
そして大地の精霊
(土から生まれ いずれは土に帰るヒトだから天国には行かないのよ
大地の精霊、地獄の鬼、悪魔・・・)
そーですね、森には森の、山には山の、海には海の神様が居てって土着信仰があって
そこに体系付けられた「宗教」って入ってきて・・・土着の神々を「悪魔」にしてしまって
こーゆーのと・・・・大航海時代の西洋諸国の新大陸侵略・・・・そして西部劇・・・
私は西部劇が好きです インディアンは土着の民 そこへ侵略してきた白人達
征服・・・土地を奪われ、国を奪われた彼らは諦める事無く抵抗活動を続ける
駅馬車を襲い 鉄道を破壊し それをあくまでも白人の視点から勧善懲悪として描く
この描き方を土着信仰と宗教との物語に適用して・・・・天使が居て、悪魔が居て、人間が居て
天には神様は居る、悪魔は生活に密着した所に居る・・・・ほら君のすぐ後ろに悪魔が・・って
天に居る彼らは人間に秩序と平和と博愛と服従と隷属を求める
私が昔からずっと描き続けてる(私は同人漫画家なので)テーマだったりします
「私」が「時の囲われモノ」で「予定調和を乱すモノ」なのはここから引っ張ってきてます
氷上シュンを体制側の代弁者として使っちゃいました(天使のシュンちゃん)・・・・・・
裏設定として「最後の審判の前に死者復活する事は許されない」と考えてる組織があって
実力行使してきます(神のシンパ一同・・・神様自身は無関心なんでしょうけど)
「私」この辺を輪廻として捉えてますが(この辺がアジアンテイスト)
藍が御使いに対して使った最後の技は 天空剣Vの字斬りです あは あは あは
(趣味に走ってるなぁ・・・・)
次回予告 アカネシナリオ登山部編です・・・・といいつつ私 運動部って苦手
漫研と演劇部の掛け持ちだったし・・・・
尾根〜輝く季節へ〜
ちゃんちゃん